きみももう二五歳なんだってね。 だとすると、 きみが生まれたとき、 ぼくは今のきみと同い年だった ってことだな。 もうちょっとすると、 自分と同い年だったときの親の姿を、 記憶の中から引っ張り出してきて、 自分の姿と比べちゃったり、 するんだろうなあ。 五〇歳くらいになると、 自分と同い年だったときの親が、 あとどれくらいで死を迎えたかまで、 はっきり見えちゃうんだよね。 点がつながって線になっちゃうのさ。 だから、生きていた思い出に、 何か一つ後に残せるものを作っておきたい、 などと思ったりするんだ。 たぶん作れないけどね。 でも、 きみがそんなことを思うまでは、 まだたっぷり時間があるはずだから、 今言ったことは、 軽く聞き流して、 元気にいってらっしゃい。 悔いを残すなよ。