ごちそうだ。 逸る気持ちを抑えながら、 包み紙を丁寧に外して、 白い皮を剥き出しにする。 三十年ものの特上というところだろう。 滅多にお目にかかれるものではない。 二十年ものにはない深みが感じられる。 肩から胸にかけての脂の乗り具合が最高だ。 そのくせ腹のあたりには無駄な肉がない。 しかしその先で目が釘付けになった。 下の方の唇に口紅が塗ってある! 食欲が一気に失せて、 その場にへたりこんでしまった。 するとごちそうが、 ぱちりと目をあけて言ったのだ。 「早くおいで」 間違いでしたと謝っても、 許してくれそうにはなかった。