落ちる



目と目の間のちょうど真ん中あたりから、 内側に引っ張られる力を感じた。 吸い込まれるというより、 落ちているらしい。 落ちても落ちても落ちたりなくて、 最後の瞬間がやってこない。 ひょっとすると、 そのときが来るのは、 かなり先のことなのかもしれない。 しかし、そう思っている間に、 唐突にやってくるのかもしれない。 いずれにしても、 そのときまでは 落ち続けるしかないのだ。 いつから落ちているのかは、 今さらもうどうでもよいと思った。 落ちている間は、 まだ終わっていない、 ただそれだけのことだと思った。


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
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