主題
リントラが叫び、重い空に炎を振りかざす。
餓えた雲が海に垂れ下がる。
かつて危険な細道を進んだ従順な
正義の人は、死の谷でも
道を踏み外さなかった。
薔薇は棘の伸びた先に咲く。
蜜蜂は不毛の
荒地に歌う。
そして、危険な細道は耕された。
あらゆる断崖、あらゆる墓に
川が流れ、泉が湧いた。
そして白骨の上には
赤い土が芽を出した。
そこで悪党どもが安楽の道を去り、
危険な細道に侵入して、正義の人を
不毛の地に追いやった。
今や卑劣な蛇蝎が腰を低くして
おとなしそうな顔をして歩いている。
正義の人は獅子のうろつく荒野で
激怒にかられて絶叫している。
リントラが叫び、重い空に炎を振りかざす。
餓えた雲が海に垂れ下がる。
序詩|*|悪魔の声|*|記憶に残る幻想|地獄の箴言|*|記憶に残る幻想|*|記憶に残る幻想|*|記憶に残る幻想|*|記憶に残る幻想|自由の歌
新しい天国が始まり、すでに三三年を経たが、時を同じくして永遠の地獄もよみがえった。そして見よ。スウェーデンボルグは復活の墓に座る天使であり、彼の書物はそこに残された亜麻布の塊だ。今はエドムの支配するときであり、アダムが楽園に戻るときだ。イザヤ書三四章と三五章を見よ。
対立がなければ進歩はない。人間が生きるためには、親和と反発、理性と情動、愛と憎悪が必要だ。
宗教家たちが善と悪と呼ぶものは、これらの対立から生まれる。善は理性に従う受動であり、悪は情動から沸き上がる能動である。
善は天国。悪は地獄。
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悪魔の声
あらゆる聖書、聖典は、以下の誤りの原因となってきた。
一.人間は、二つの実在する要素に還元される。すなわち肉体と霊魂。
二.情動は、悪と呼ばれ、肉体のみから生じ、理性は、善と呼ばれ、霊魂のみから生じる。
三.神は、情動を追及する人間を、永遠に責めさいなむであろう。
しかし、真実はその逆である。
一.霊魂と分離した肉体は存在せず、肉体と呼ばれるものは、この時代の霊魂の主要な窓口である五感によって認識される霊魂の一部分である。
二.生命を持つのは情動だけである。情動は肉体より生じ、理性は情動の部分的なあるいは外面的な表皮に過ぎない。
三.情動こそが永遠の喜びである。
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欲望を抑圧する人間は、抑圧できるほど弱い欲望しか持たないから抑圧するのだ。抑圧者たる理性は、欲望から居場所を奪い、満たされない欲望を抑えこむ。
そして抑圧された欲望は、次第に受け身にまわり、欲望の影に過ぎないものに落ちぶれる。
この歴史は失楽園に書かれており、抑圧者すなわち理性はメシアと呼ばれている。
また、もとは大天使で、天空に号令をかけていた者は、悪魔あるいはサタンと呼ばれ、罪と死を子に持つ。
しかし、ヨブ記では、ミルトンのメシアはサタンと呼ばれている。
それは、この歴史が両陣営に認められているからである。
理性には、追放されたのは欲望のように見えただろう。しかし、悪魔の側からすれば、落ちたのはメシアであり、メシアは混沌から盗んだものによって天国を作ったのである。
これは、福音書を読めばわかる。キリストは、理性が観念を築く基礎を与える聖霊すなわち欲望の派遣を父に祈っている。聖書のエホバは、燃えさかる炎のなかに住む彼の者にほかならない。
死後、キリストがエホバになったことを思い出せ。
しかし、ミルトンにおいては、父なる神は運命であり、御子は五感で測れる存在であり、聖霊に至ってはどこにもいない!
注意。ミルトンが天使と神を描くときに窮屈そうで、悪魔と地獄を描くときに力を発揮したのは、彼が真の詩人であり、知らぬ間に悪魔の陣営に属していたからである。
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記憶に残る幻想
天使には正気を失うような苦痛に見えるのだろうが、地獄の火のなかで私は精霊の楽しみと歓びに満たされていた。そして、そのなかを歩きながら、私は地獄の箴言を集めた。言葉が民族の特徴をよくあらわすことを考えれば、それらは衣装や建物を説明するよりも地獄の知恵の性質をよく解き明かすはずだ。
現世、すなわち鋭い断崖に閉ざされた五感の淵底の世界に還ってきたとき、私は黒雲に包まれた強力な悪魔が、断崖の傍らを漂いつつ、腐食の火で次のような文字を書き付けたのを見た。今や地上の者たちもこの文字を認め、読むことができる。
五感に閉ざされたお前たちに、空を切って飛ぶ一羽一羽の鳥が歓びに満ちた広大な宇宙であることがどうしてわかろうか?
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地獄の箴言
種まきどきに学び、収穫どきに教え、冬に楽しめ。
死者の骨の上に車を引き、犁を下ろせ。
過剰の道は、知恵の宮殿に通ずる。
慎重は、無能に言い寄られる年老いた金持ちの醜い処女である。
望みながら行動を起こさない者は、悪疫を生む。
切られた虫は、犁を許す。
水を好む者は、川に浸せ。
愚者が見る木と賢人が見る木は同じではない。
表情に輝きのない者は、星にはなれない。
永遠は、時間の産物を喜ぶ。
忙しい蜂に悲しむ暇はない。
愚者の時間は時計で測れるが、賢人の時間は測れない。
健全な食物を得るのに網や罠はいらない。
飢饉の年には数、重さ、大きさのあるものを作れ。
自らの羽で飛ぶ鳥に高く飛び過ぎるということはない。
死体は傷に復讐しない。
もっとも崇高な行為は、他者に譲ることである。
自らの愚かさにこだわる愚者は、賢人になる。
愚鈍は不正を包む衣である。
羞恥心は自惚れを包む衣である。
牢獄は法の石によって建てられ、売春宿は宗教の煉瓦によって建てられる。
孔雀の自惚れは、神の栄光である。
山羊の肉欲は、神の贈り物である。
獅子の怒りは、神の知恵である。
女の裸体は、神の作品である。
過剰な悲しみは笑いを呼び、過剰な歓びは涙を呼ぶ。
獅子の咆哮、狼の唸り、嵐の海のうねり、破壊の剣は、人間には計り知れぬ永遠の栄光の一端である。
狐は自分ではなく、罠を非難する。
歓びが孕み、悲しみが生む。
男には獅子の皮、女には羊の毛を着せよ。
鳥の巣、蜘蛛の糸は、人の友情。
勝手に微笑っている愚者やむっつりと眉をしかめている愚者は、権威があるように見えるので、賢人だと思われる。
今、証明されているものは、かつては想像されただけに過ぎない。
大鼠、家鼠、狐、兎は根元を見るが、獅子、虎、馬、象は果実を見る。
水槽は包み、泉はあふれ出させる。
一つの思いが無限を満たす。
自分の意思をいつでも明らかにできるようにしておけば、卑しい人間は近寄らない。
信じることができるあらゆるものは、真実を反映している。
烏に学ぶことほど鷲にとってひどい時間の無駄はない。
狐は自分の身を守るが、神は獅子の身を養う。
朝考え、昼行動し、夕方に食べ、夜は眠れ。
人に欺かれるままにされている人は、相手を知っている。
鋤が意思に従うように、神は祈りに報いる。
怒れる虎は訓練された馬よりも賢い。
澱んだ水を見たら毒があると思え。
充分以上のものを知らなければ、何が充分かはわからない。
愚者の非難には立派なお題目がある。
目は火、鼻孔は空気、口は水、髯は大地。
勇気に欠ける者は、奸智に長ける。
林檎が山毛欅に実のつけ方を尋ねることはなく、獅子が馬に獲物の捕え方を尋ねることはない。
贈り物に感謝する者は、豊作に恵まれる。
ほかに莫迦になった者がいなければ、自分がなるべきだ。
歓びに包まれた魂は、決して汚されない。
鷲を見るということは、精霊の一端を窺うということだ。頭を上げよ。
毛虫が一番柔らかい葉に卵を生むように、祭司は最良の歓びを呪う。
小さな花を作るにも、数世代の力が必要だ。
非難は縛り、賞賛は解き放つ。
最良の葡萄酒は最古の葡萄酒。最良の水は最新の水。
祈りを耕すな! 賞賛を収穫するな!
喜びを笑うな! 悲しみを泣くな!
頭は崇高、心臓は悲痛、性器は美、手足は均整
鳥には空、魚には海、卑しむべき者には侮辱。
烏はすべてが黒ければと嘆き、梟はすべてが白ければと嘆く。
充溢は美である。
獅子が狐の意見を聞いていたら、狡猾者になっていただろう
改良は直線的な道を作るが、精霊の道は改良の余地なく曲折している。
満たされぬ欲望を育てるより、ゆりかごにいるうちに殺す方がましだ。
人がいない土地は不毛だ。
真実は、理解されるように語ることはできないし、信じられないように語ることもできない。
充分に、でなければ充分以上に。
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古代の詩人たちは、知覚できるあらゆるものに神々、すなわち精霊の生命を吹き込んだ。森、川、山、湖、都市、民族など、彼らの壮大で多彩な感覚が認知しうるあらゆるものの名前で神々を呼び、それらの属性で神々を飾った。
特に、彼らは一つ一つの都市や国の精霊を凝視し、心のなかの神性のもとにそれらを位置付けた。
しかしそれは、民をだまし、隷属させる体系が形成されるまでのことだった。体系は、対象から神性を抽出し、実体化する。かくして、祭司制が確立した。
詩的な物語から崇拝の形式だけを抜き取ったのである。
あげくのはてに、祭司たちは、神々がそのようなことを命じたのだと公言した。
かくして人々は、神性というものが人間の胸のうちにあることを忘れたのである。
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記憶に残る幻想
預言者のイザヤ、エゼキエルと晩餐をともにしたとき、私は彼らに尋ねた。なぜ、あなたがたは、神が話しかけられたということをあんなに強く主張したのか。そのとき、誤解され、迫害される原因になりはしないかと思わなかったのか。
イザヤが応えた。私は、有限の知覚器官で神を見たり、聞いたりはしていない。しかし、私はあらゆるものから無限の存在を感じ取っていたし、正直な憤りの声は神の声なのだと教えられ、それをずっと確信し続けていたので、結果を考えずに書いたのだ。
私はさらに尋ねた。こうだと固く信ずるなら、それはそうなるものなのか。
イザヤは応えた。あらゆる詩人はそう信じているし、想像力の時代には、固い信念が山をも動かした。しかし、多くの者は、何事に対しても固い信念を持つことができない。
次いでエゼキエルが言った。オリエントの哲学は、人間の知覚の第一原理を教えたが、民族によって、起源の原理はまちまちだった。我々イスラエル人は、詩の精霊(と今なら呼ばれるもの)こそが第一原理であり、他のものはすべてそれから派生したものに過ぎないと説いた。我々が他国の祭司や哲学者を侮蔑したのはそのためだし、すべての神はイスラエルの神から派生したものだということが証明され、それらの神は詩の精霊の前にひれ伏すだろうと預言したのもそのためである。そして、我らが偉大な詩人、ダビデがあれほど熱烈に求め、あれほど激しく祈ったのもこの神であり、彼はこの神のもとに敵を征服し、王国を統治すると言ったのだ。私たちは我が神を非常に愛したので、主の御名のもとに周辺諸民族のあらゆる偽りの神を呪い、彼らを反逆者と断定した。あらゆる民族はいずれユダヤ人に征服されると民が思い込むようになったのは、この教えのためである。
イザヤはさらに言った。あらゆる固い信仰と同じように、これは成就した。すべての民族がユダヤの聖典を信じ、ユダヤの神をあがめているではないか。そして、これに勝る征服がほかにあろうか。
私は驚きとともにこれを聞いた。そして私自身の罪を告白しなければならない。晩餐の後、イザヤにあなたの失われた書物をこの世界に与えてほしいと頼んだが、彼は同じ価値を持つものは一切失われていないと言い、エゼキエルも、自分も同様だと言った。
私はイザヤに三年間も裸、はだしで歩いたのはなぜか、とも尋ねた。彼は、我がギリシャの友、ディオゲネスと同じ理由だと応えた。
それから私はエゼキエルに糞を食べ、長い間左脇、次いで右脇を下にして寝たのはなぜかと尋ねた。エゼキエルは応えた。他の人々を目覚めさせ、無限を知覚できるようにさせたかったからだ。北アメリカの民族はこれを行っている。目先の安楽や満足だけのために自らの精霊、すなわち良心を拒む人間は、誠実だと言えるだろうか?
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私が地獄で聞いてきたところによれば、六千年ののちに世界が焼き尽くされるという古くからの聖伝は真実である。
そのときが来たら、炎の剣を持つ智天使は、生命の樹の守りから離れるように命ぜられており、彼が樹から離れると、あらゆる被造物は焼き尽くされ、今のように有限で堕落した姿ではなく、無限で聖なる姿を取るようになる。
これは、肉体の歓びの開発によって成就される。
しかし、何よりもまず、人間が精神とは別個の肉体を持っているという考え方が払拭されなければならない。私は、腐食を使った地獄の方法で印刷することによって、この仕事を成し遂げるつもりだ。目に見える表面を溶かし去り、隠されていた無限を顕わにする腐食は、地獄では健康的で身体を癒す力を持つ。
知覚の扉が取り払われたら、何もかもがありのままの無限の姿で人間の前に顕れるだろう。
人間は自らを閉ざしてきた。今や、人間は、洞穴の狭い隙間からものを見ているに過ぎないのだ。
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記憶に残る幻想
私は地獄の印刷所で、知識が世代から世代に渡されていくしくみを見てきた。
第一の部屋には龍人がいて、洞穴の口からごみを掃き出していた。洞穴のなかでは龍の群れが穴を掘っていた。
第二の部屋には蝮がいて、岩と洞穴をぐるぐる巻きにしていた。そしてほかの者は蝮を金、銀、宝石で飾り立てていた。
第三の部屋には空の翼と羽毛を持つ鷲がいて、その翼で洞穴のなかを無限に変えていた。周囲には鷲のような人間がいて、果てしなく切り立った絶壁に宮殿を築いていた。
第四の部屋には、炎に包まれ、怒りくるった獅子がいて、金属を溶かし、生きた液体に変えていた。
第五の部屋には、名前を持たない生物がいて、金属液を広大な空間に撒き散らしていた。
それらは第六の部屋の主である人間によって受け取られ、本の形を取り、書庫に並べられた。
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勇気に欠ける者は奸智に長けるという箴言に従うなら、現世を官能的な存在に変え、今は鎖につながれて生きているように見える巨人たちは、本当は、現世の生命の根拠であり、あらゆる活動の源泉だが、彼らをつなぐ鎖は、弱く飼い慣らされた精神の奸智である。それは、情動に反抗する力を持っているのだ。
このように、存在の一面は栄えであり、もう一面は滅びである。滅びの者は、自分の鎖に巨人をつないでいるつもりかもしれないが、そうではない。彼は存在の一部を取り出してそれがすべてだと思い込んでいるのだ。
しかし、海としての滅びが過剰な歓びを受け止めてくれなければ、栄えは栄えであり続けることができないだろう。
神以外に栄えはないのではないか? と言う者がきっといるに違いない。答えよう。神が力を及ぼすのは、そして神が存在するのは、生きている者すなわち人間のなかだけだ。
地上には、常にこの二種類の人間がおり、敵対せざるを得ない。両者を調停しようとする者は、生命の破壊を目論む者だ。
宗教は両者を調停しようとする努力である。
注意。羊と山羊の比喩からもわかるように、イエス・キリストは、彼らの統一ではなく分離を望んでいたのだ。彼は、地上に来たのは平和ではなく、剣をもたらすためだと言っている。
メシアすなわちサタンすなわち誘惑者は、かつては大洪水以前の者、すなわち我々の情動であると考えられていた。
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記憶に残る幻想
ある天使が私のところに来て言った。おお、哀れで愚かな若者よ! 怖いことだ! 恐ろしいことだ! お前は、灼熱の炎に包まれた牢に自らを未来永劫に渡って閉じ込めようとしているのだぞ。お前はそれにふさわしい生き方をしているのだ。
私は応えた。お前は私の未来永劫の運命を見せようというのだな。それなら二人でじっくり見てみようではないか。お前の運命と私の運命のどちらがよいか、はっきりさせようではないか。
天使は、私を連れて、馬小屋から教会へ、さらに教会の地下の納骨堂へと導いた。そのはずれには粉碾場があり、そこを通り抜けると、洞窟のなかだった。曲がりくねった洞窟のだらだらとした道を手探りで進んでいくと、無限の空虚に達した。私たちの下に地底の空が広がっていたのである。私たちは木の根につかまり、この無限の上にぶら下がった。私は言った。この空虚に身をゆだねて、ここにも神の摂理があるかどうかを見てみようではないか。お前が行かないなら、私が行く。しかし、天使は応えた。でしゃばるな、若僧。ここに留まっていれば、じきに暗闇が去り、お前の運命が見えるのだ。
そこで、私は天使とともにそこに留まることにして、槲の曲がりくねった根っこに座った。天使は、地底の空に向かって生えていた茸の笠にぶら下がった。
燃える都市の煙のように熱い無限の奈落のようすは、次第に見えてきた。私たちのはるか下の方には、黒いのに輝いている太陽があった。赤く燃える軌道が幾重にもそのまわりを取り囲み、獲物を狙う蜘蛛がぐるぐるとまわっていた。獲物たちは、無限の深みのなかを飛ぶというよりも泳いでいて、腐敗から生まれた動物たちのなかでももっとも恐ろしい形をしており、地獄の空はそれらでいっぱいで、それらが地獄の空を形作っているかのようにも見えた。それらは悪魔で、空の能天使と呼ばれていた。私は天使に尋ねた。どれが私の永劫の運命なのだ? 天使は、黒蜘蛛と白蜘蛛の間だと応えた。
しかし、その黒蜘蛛と白蜘蛛の間から炎が上がり、雲が湧き起こって、地獄の空を黒く巻き込んでいった。地獄の空は海のような黒い塊となり、恐ろしい音を立てながらうねっていた。私たちの下は、この黒い嵐に覆われて何も見えなくなってしまったが、やがて東の空の波と雲の間に、炎の混ざった血の奔流が現れた。そして、石を投げても届きそうなところに巨大な蛇の鱗のあるとぐろが見え隠れしたかと思うと、東に三度ほど離れたところに、燃える首を突き出した。それは黄金の山脈のようにゆっくりとせり上がり、海はそこから煙の雲のなかに逃れ、ついに紅蓮の炎に輝く二つの球体が認められた。それはレビヤタンの頭だったのである。額は虎のように緑と紫の縞模様になっていた。やがて、海を泡立たせてその口と真っ赤な鰓が姿を現わし、湧き出す血で黒い海をどよもしながら、霊的な存在の怒りを込めてこちらに向かってきた。
我が友、天使は、ぶら下がっていた場所から粉碾場によじ登り、私は一人で残されたが、やがてその光景は消え、私は川沿いの気持ちのよい斜面で月の光を浴びて座っていた。ハープを弾きながら歌う声が聞こえたが、その歌は、頑なに考えを枉げない人間は、澱んだ水のようなもので、心から蛇を孵す、というものだった。
しかし私は這い上がり、粉碾場に戻った。そこには、我が天使がいて、驚きながら、どうやって逃げてきたのかと尋ねた。
私は応えた。私たちが見たものは、お前の形而上学の産物だったのだ。なぜなら、お前が逃げたあと、私は月光の下でハープ弾きの歌を聞きながら、土手に座っていたのだから。しかし、私の永劫の運命とやらは見たので、今度はお前にお前の運命を見せてやることにしよう。天使は、私の言葉を嘲笑ったが、私は彼に飛び掛かり、両腕で抱きかかえると、夜通し西に向かって飛び、地球の影が届かないところまできた。私は、天使もろとも太陽の中心に飛び込み、白衣を着た。そして、スウェーデンボルグの本の束を手につかむと、この栄光の地から沈み、あらゆる惑星を通り過ぎて土星まで落ちた。そこでしばらく休むと、土星と恒星群の間の空虚に飛び上がった。
私は言った。お前の運命は、ここに、この空間にある。もし、これを空間と呼べるならば。まもなく、馬小屋と教会が見えた。私は彼を祭壇に引きずり上げて、聖書を開いた。すると見よ! それは深い穴だった。私は、天使を後ろから小突きながらその穴を下っていった。やがて、煉瓦造りの七つの家が見え、我々はそのうちの一つに入った。そこには、猿、狒狒の類のあらゆるものが腰から鎖で繋がれていた。猿どもは、互いに歯をむき出したり、抱き着いたりしていたが、鎖が短いので何もできなかった。しかし、ときどき彼らは膨大な数にまで繁殖し、弱いものは強いものに捕まってしまった。強い方は、歯をむき出してニッと笑いながら弱いものと交尾したかと思うと、足を一本ずつ引き抜いてむしゃむしゃと食べ、最後には動けない胴体だけが残された。そして、これさえ、好意があるかのようにニッと笑ってキスをすると食べてしまうのである。そして、自分の尻尾の肉をうまそうに食べているやつもあちこちにいた。私たちは二人とも悪臭にうんざりしたので粉碾場に戻った。私はその家から骸骨を一つ持ってきたが、粉碾場で見ると、それはアリストテレスの分析論だった。
天使は言った。お前は、私に空想を押し付けた。お前は恥じなければならない。
私は応えた。押し付けたのはお互い様だ。分析論を操るだけのお前のようなやつと話をしたのは、時間の無駄だった。
敵対は真の友情
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いつも思うことだが、天使たちは自惚れていて、自分たちだけが賢いと言いふらす。しかも自信満々でそう言うのだが、この自己過信は、系統立った論理から生まれたものである。
スウェーデンボルグが自分の本は新しいと自慢するのもそれだが、彼の書いたものなど、実際にはすでに出版されてる本の目次か索引に過ぎない。
見世物の猿を連れて歩いている男がいた。彼は、猿よりも少し賢いからといって増長し、自分が七人の人間よりも賢いと思い込んでしまった。スウェーデンボルグもこれと同じだ。彼は教会の愚劣さを説き明かし、偽善者を暴露するあまり、すべての人が宗教的だと思い、地球上で網を破ったのは過去から現在を通じて自分一人だと妄想してしまう。
しかし、事実は違う。スウェーデンボルグは、新しい真実を書いてはいない。もう一つの事実がある。彼はありとあらゆる古い誤りを書いているのだ。
理由はこうだ。彼は宗教的な天使たちとは対話したが、宗教を憎む悪魔たちとは対話していない。彼の思い上がった考え方では、それができなかったからである。
かくしてスウェーデンボルグの書いたものは、あらゆる上っ面の議論の要約であり、自分より崇高なものの分析になったが、決してそれよりも深くはならなかった。
もう一つの事実を明らかにしよう。機械的な才能を持つ人間なら、パラケルススやヤコブ・ベーメが書いたものを使って、スウェーデンボルグが書いたものと同じ価値を持つ一万巻の書物を書ける。そして、ダンテやシェークスピアを使えば、無限の書物が書けるだろう。
しかし、彼がそれをなしとげたとしても、師より彼の方がものをよく知っているなどと言わせてはならない。彼は日の光のもとで蝋燭を掲げているだけに過ぎないのだから。
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記憶に残る幻想
私は、炎に包まれた悪魔が雲の上に座っていた天使のところまで上昇し、次のようなことを口にしたのを聞いたことがある。
神を拝むということは、他の人々がそれぞれの精霊に従って持っている神の贈り物を称えることであり、もっとも優れた人をもっとも賛美することである。偉大な人間を羨んだり中傷したりする人間は、神を憎んでいる。なぜなら、ほかに神はいないからだ。
天使はこれを聞いてほとんど真っ青になったが、自分を抑えて黄色くなり、白くなって、最後にはうす赤く頬を染めて微笑み、応えた。
汝偶像崇拝者よ、神は唯一のお方ではないのか? その神はイエス・キリストとして降誕したのではないのか? イエス・キリストは十戒を肯定し、彼以外のすべての人間は愚者であり、罪人であり、無ではないのか?
悪魔は応えた。たとえ小麦といっしょに臼で碾いても、馬鹿から愚かさをたたき出すことはできない。イエス・キリストがもっとも偉大な人間だとしたら、お前は彼を最大限に愛さなければならないはずだ。では、イエスが十戒を肯定したとはどういうことなのか、聞くがよい。イエスは安息日を破って、神の安息日に背いたのではないのか? 彼のために殺された人々を殺したのではないのか? 姦通の現場でつかまった女のもとから法を追い払ったのではないのか? 自分のために他人の労働の成果を盗んだのではないのか? ピラトの前で何も言わなかったとき、偽証を支えたのではないのか? 弟子たちのために祈ったとき、また宿を拒んだ町では足についた埃さえも払い落とせと弟子たちに命じたとき、他人のものを欲したのではないのか? 聞け。十戒を破らなければいかなる徳も存在し得ないのだ。イエスは、徳に満ち溢れていた。そして彼は規範ではなく、閃きによって行動したのだ。
悪魔が話し終えたとき、私は天使が腕を広げ、炎を抱きしめたのを見た。そして天使は燃え尽き、エリヤとなって昇天した。
注意。この天使は、今は悪魔となり、私の親友となっている。私たちはよくいっしょに、地獄、あるいは悪魔の意味で聖書を読んでいる。世界が正しく行動すれば、その意味は明らかになるだろう。
私は地獄の聖書も持っている。これは、正しく行動するかどうかに関わらず、世に出るはずだ。
獅子と牡牛に同じ法を押し付けるのは圧政である。
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自由の歌
一.永遠の女がうめき声をあげた。それは地上のあらゆるところで聞こえた。
二.アルビオンの岸はぞっとするほど静かで、アメリカの野は真っ青だ!
三.予言者の影が、湖や川のかたわらで震えている。その呟きは、海を越える! フランスよ、おまえの牢を打ち破れ。
四.黄金のスペインよ、古いローマの壁を突き崩せ。
五.おお、ローマよ、お前の鍵を流れ落ちる海に、崩れ去る永遠に投げよ。
六.そして泣け!
七.彼女はふるえる腕に生まれたばかりの泣き喚く恐怖の子を抱いている。
八.今は大西洋に沈められている無限の光の山の上に、新しく生まれた火が立つ! 星の王の前に。
九.衰えた不寛容の王は、灰色の眉と白髪の者たち、雷を呼ぶ者たちを従え、海の上で翼を波打たせた。
一〇.燃える手を高く突き上げ、盾の留め金が外された。 王は燃える髪の間から手を突き出し、生まれたばかりの驚異を力いっぱい星空に投げた。
一一.火が、火が、落ちてくる!
一二.見上げろ、空を見上げろ、ロンドンの市民よ! 支持の輪を広げよ。おお、ユダヤ人よ、金を数えるのをやめよ! 香油と葡萄酒に返れ! アフリカ人よ! 黒いアフリカ人よ! (行け。羽ばたく思想よ、彼の行く手を広げよ。)
一三.炎の手足、燃える髪が、西の海に沈む日のように飛び込んだ。
一四.永遠の眠りから覚め、白色の元素は叫びながら逃げていった。
一五.不寛容の王は、灰色の眉の顧問官、雷を起こす戦士、巻き髪の老兵とともに、虚しく翼を打ったが、舵、盾、戦車の馬、象、また旗、城、石弓、岩のなかに墜落した。
一六.落ち、戦い、滅んた! アーソナの穴の上の廃墟に埋められた。
一七.廃墟で一夜を過ごしたあと、色褪せた重い炎が失意の王を包んだ。
一八.雷鳴と炎を持つ王は、星の軍勢を率いて荒地を進み、十の命令を広めた。暗く沈んだ海に刺すような視線を投げながら。
一九.朝が金色の胸の羽繕いをしている間に、東の空に火の息子が雲に乗って現れた。
二〇.呪いの雲を蹴散らし、岩に刻まれた法を踏み潰し、夜の穴から永遠の馬を解き放って叫んだ。
帝国は消滅した。獅子と狼の戦いは終わる。
合唱
夜明けの黒烏のような祭司たちよ。黒衣に包まれたかすれ声のお前たちに、もう歓喜の息子たちを呪わせはしない。祭司が受け入れた兄弟、暴君たちよ。もうお前たちに境界線を引かせたり屋根を作らせたりはしない。蒼白い戒律の淫売どもよ。もうお前たちに望みながら行動を起こさない者を純潔とは呼ばせない。
生きているすべてのものが神聖なのだ。
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