花盛りの下を電車は走る
子供らや
藁
ムラサキダイコンを載せて
彼方には春の火のたつ群落
ときに
鉄橋のカーブを越え
白い光がうずめる
陰のない街の広場を抜ける
ギヤマンのなかの
夥しい交接と労苦の日々
花屋でヒヤシンスの首は斬られるが
むしろ血は過去の染みでしかない
暗い駅に太陽がふりそそぐ
冬の悪い夢のなかで
どんな禿頭を愛したのか
尖塔で鳴らされる鉦
単純な夜の構造に
透明な雨が何枚も襲い来ては去り
美しい斧の裂け目に烙印は証されるだろう
レンギョウは割れ
蓮華は割れ
淡い空中に四月のかがみは散りつづけ
蒼いレールの没する彼方
水平線に静かな閃光が湧く
花盛りの下を去ってゆく影は誰?
銀の骨組みを慄わせて電車は疾走する
|