銀杏が隙間なく埋まっている
真っ黄色だ
テニスコートがあって人たちが走っている
彼の表情はどんどん悪くなると思った 治療しているのに
顔から精彩がなくなっていく 「蛙の呼び出し方」という
図鑑を広げたまま彼は眠っているのか 目をつぶっている
のか 銀杏の葉が風に揺れ この集会室は受験生のための
勉強部屋になっている 銀杏の葉は揺れ続け ぼくと図鑑
を広げた彼だけからペンを走らす音が聞こえない
* *
明るい店に来る
明るい店はいい
コーヒーとミートソースを注文した
薬を飲んだ
この店は大きく明るい
朝食と昼食のあいだ みんな喋っている
席の半分は埋まっていて 本を読む人がいて
角のテーブルでノートを取る人がいる
ぼくはアメリカン・コーヒーを注文した。
アメリカン・コーヒーと発音できる
* *
にぎやかな場所にやってきた
水を飲む
店の外には鉄の口
絵皿が無数にあり
中世の騎士の絵 槍を投げるエスキモーの絵
魚を捕る船乗りの絵 花を摘む女の絵
スキー靴を履いた子供の絵 鷲だ 金の枝の木
苺の形のケーキをたのんだ
それとセイロン・ミルクティーを
店のすべてのテーブルで会話が続いている
クリスマスから正月へ加速する
その加速に乗った人たちがテーブルの上で汗をかいている
* *
声はあふれ あふれ
老人たちとすべり台
恋人と自転車
ここにもまったく葉のついていない枝がのびていて
木の枝の影が噴水のところまでのびる
日はあふれ
ぼくは日のあたるベンチで
眠りたい
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