3 夏の森の男


    呼びリンは どこ?     持ち主は  だれ?     リンリンリン     リンリンリン     この森は どこ?     持ち主は だれ?    《私は、     片目をひとつ、落としてきたけれど     それは とても大切なもの ではないのかしら》 (この作品の初演は──) レイネ・レイネ 一歳半。 1949年 真昼です、 真夏の森の入り口付近では、 ジージー蝉の一連隊がひとしきり騒いでおります     ジージージー     ジージージー、     あの、太陽に     パンチを食らわしたら?     夕立が 来るのです。     ジージージー     ジージージー         レイネ・レイネ(くるぶしまで 夏草)     レイネ・レイネ(日当たりのよい鳥籠)      真昼です。 【ここイチバンの プレッシャーに強い・盛夏】 メジロ捕りの 従兄に 負ぶわれた 1才半の赤い小さな女の子が、今日もまた、 この森の奥深くへ やってきています──          リン・リン・リン     リン・リン・リン     呼びリンは どこ?     持ち主は  だれ?     レイネ・レイネ(くるぶしまで 夏草)     レイネ・レイネ(日当たりのよい帽子)     タカア・カアマ・アマ・ハラ *     タカア・カアマ・アマ・ハラ    (メジロが 三羽、歌います)     アメツチノ ナリハジメノ トキ *     アメツチノ ナリハジメノ トキ、     リンリンリン     リンリンリン     この森は  どこ?     呼びリンは だれ?          レイネ・レイネ(くるぶしまで 夏草 )     レイネ・レイネ(日当たりのよいリボン)    《私は、     片目をひとつ、落としてきたけれど、     それは とても大切なもの ではないのかしら》 真昼です、 赤ん坊の 裸足がまぶしい シースルーの夏の森。 きれいな飴玉をなめたら、 夕立がふってきました。 そして、 (メジロが 一羽 罠にかかりました) 《空白の ビックリ箱のように》 引きつけると 同時に 烈しく 突き放す、このメロディーが 森の命(いのち)の彩りなのだから──     そして、    (メジロが 二羽 罠にかかりました)     レイネ     レイネ     レイネ(TWO)     その時、     赤い小さなわたくしは     森の男の背にしがみつきながら、     野性の神様の あくびをキャッチいたしました。     ──その時、メジロが三羽、罠にかかっておりました 夕立は あがっていました。 (それは艶やかな匂いがしました) 二人目の神様が やっと 目を瞑りました。 (私は、恋を感知しました)   《呼びリンは どこ? 》 《持ち主は  だれ?》  (伝説の迷彩色) ──白いシャツを、返してくれ!                        * 古事記


(C) Copyright, 1998 AOKI, Eime
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