その後



この間は失敗した。 身軽になったとか、完結させたとか言ってしまった分、 忘れられなくなってしまった。 気持ち悪くひっかかっているのである。 残された妻子のために カンパの口座が開かれていることを教えてもらって、 何日もたってから、月五万円の小遣いから 一万円振り込んだときのように、 気持ち悪い。 (なんで一万円なんだよ) ところで、覚えていたのはコーヒーのいれ方だけではなかった。 ウォッカのトマトジュース割りの作り方も教わっていた。 (ブラディマリーだっけ?) 調合の割合は忘れてしまったからコーヒーのいれ方ほど 正確に覚えていないというだけである。 しかし、考えてみれば、コーヒーのいれ方も、 細かい言葉は覚えていない。 間違って覚えている部分もあるのかもしれない。 どちらも、教わった場所は特定できる。 同じ場所だもんな。 Kはウォッカの入っていないトマトジュースも、 よく飲んでいた。塩が入っていると血の味がするからといって、 無塩というのを飲んでいた。 私は、血の味がする方が好きだ。 その頃は飲めなかったが。


(C) Copyright, 1998 NAGAO, Takahiro
|ホームページ||詩|
|目次||前頁(コーヒーのいれ方)||次頁(さらに)|
PDFPDF版