かの字



バクチってのはさ、 客さえいれば胴元はかならず儲かるもんでしょ。 客のなかには得するのもいれば損するのもいるけど、 胴元はかならず何割かを取ってくわけだから負けなし。 逆に客全体で見ればかならず損するわけだよね。 イカサマなしなら、 やればやるだけ実際の結果が理論的な確率に近づいてくから、 かならず損するわけ。 まして、イカサマがあるなら、 得させる客がいる分ほかの客は損するわけだから、 イカサマなしのときより損するわけでしょ。 最高裁判所の一九五〇年の判決でも、
賭場開張図利罪は自ら財物を喪失する危険を負担することなく、専ら他人の行う賭博を開催して利を図るものであるから、単純賭博を罰しない外国の立法例においてもこれを禁止するを普通とする。
って言ってるわけ。
ない方からある方にカネが動くだけさ。
でも、そういう法律がある一方で国やら都道府県やらが
競馬、競輪なんかを主催してるんだよね。
さっきの裁判で負けた被告の弁護人もそれを主張してる。
国も公認してるんだから、
刑法一八六条二項(賭博場開張図利罪)は
新憲法では無効だって。
(何しろ日本国憲法施行から三年しかたってなかった頃の話だから
「新憲法」なのよ)
でも裁判所は、
国などが賭博場開帳図利と本質的に同じことをしているからといって、
賭博一般を認めているわけじゃないでしょって一蹴しちゃってるんだな。
論理は通ってると思うよ。
ただちょっとすっきりしないよね。
そもそもこの判決は賭博自体について、
勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法二七条一項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。
ってな風に格調高く非難してるわけだから
なおさらすっきりしないと思うんだよね。
まあ、三権分立ってのがあるからさ、
裁判の争点にもなってないことについて、
裁判所が国や都道府県に口出しするわけにもいかないから、
それ以上踏み込んでいないんだろうってことにしとこうか。
ここからは法律の専門家でもなんでもないおいらの考えだけどさ、
国や都道府県が胴元になって客から巻き上げたお金は、
理論的には税金の一部になって広く納税者に還元されるはずだよね
(実際には国とかいうやつは社会保障をけちって
軍事費や政権関係者の集票のための宴会に税金を使うみたいだけどさ)。
たぶん、国営、公営のバクチを容認できるとすれば、
結構無理があると思うけどそれ以外の理由はないと思うよ。
でもさ、のめり込んで中毒になる、
いやその前に経済的に生活破綻に陥るようなことをさせて取り上げたカネを
税金と同じように使うってのはどうなんだろうね。
税制には、所得再分配機能があるって教科書には書いてあるはずだけどさ、
国営バクチがやってることはそれとはまるで逆で、
所得再分配の恩恵を受けるべき側の人からカネを吸い上げてることになるわけじゃん。
国や都道府県がコントロールして過熱しないようにしてる、
とかいうような理屈があったとしても、それは嘘だと思うね。
すでに国営でも公営でもないパチンコ屋ってのがあるでしょ。
風営法ってのがあって許可をもらわないと営業できないから、
行政のコントロールが効いてるんだって理屈なんじゃないかな。
でも、パチンコ屋って警察から天下りするんだよね。
え、警察って規制当局なんだからパチンコ屋からしたら敵なんじゃないの? 
って感じがするかもしれないけどさ、
パチンコ屋からすりゃあ、警察OBなら警察の手のうちを知ってるし、
かつての部下に睨みを効かせてくれんだろうって期待があるから
大歓迎でしょ。
そういう自分の商品価値を知ってる警察OBからすれば、
高く売って左うちわの老後を過ごそうって思うのが自然じゃない?
規制当局ってのは理研のわかめちゃんじゃなくて利権の塊だと思うよ。
ほかの業界でもさ、ヤメ検とか言って、検事を辞めて弁護士になると
依頼が殺到するっていうよね。
それと同じなんじゃないかな。
で、横浜市長が選挙のときだけ「白紙」にした「かの字」のことだけどさ、
収賄容疑で国会議員が逮捕されるってな展開になってるでしょ。
語るに落ちたって感じだよね。
今まで「かの字」が公認されてなかった日本に
「かの字」ができるってことになれば、
「かの字」のノウハウがある外国企業が目をつけるに決まってるよね。
でも、そういう企業には「日本」のノウハウがないから、
なんとか食い込もうとして、
「かの字」解禁に熱心な国会議員に接近したわけでしょ。
結局、「かの字」解禁の理由は経済振興だの観光立国だのじゃなくて、
政治家たちの金儲けだったんだなって思ったよ。
あの業者どもはさ、
客を丸裸にして生活破綻、一家離散に追い込んだ挙げ句、
ちょっとの税金を払うだけであとの儲けは自分のものにしちゃうのに、
(もちろん、政治家に転がり込んでくる部分もあるだろうけど)
「かの字」推進派ときたらウェルカムしてんだから。
でも、この国では法の下の平等なんて絵に描いた餅らしいからさ、
検察は「したっぱ」をつかまえて仕事してるふりをしてるだけで、
大物は涼しい顔してボロ儲けしてるんだと思うよ。
だってこの話、トランプがアベにじきじきによろしく頼むぜって言ったという
アメリカの業者は絡んでないんだもん。
で、「かの字」が続く限り、大物には金が入り続けるってことなんだろうね。
ひとり殺せば犯罪者だけど、たくさん殺せば英雄、神だって言うけどさ、
詐欺師や泥棒の世界でも同じってことなんだろうねえ。

[都筑区民文化祭パネル]


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