July 311996
なつかしき炎天に頭をあげてゆく
原 裕
ひさしぶりに訪れた故郷の地。見るもの聞くもの、すべて懐しい。耐えがたい暑さなど、いつの間にか忘れたように、頭(づ)をあげて歩いていく。そろそろ、帰省のシーズン。この夏も、こんな気分でなつかしさを噛みしめる人はたくさんいるだろう。ちなみに、原裕(はら・ゆたか)は茨城県の出身。『風土』所収。(清水哲男)
July 301996
川を見るバナゝの皮は手より落ち
高浜虚子
虚子の「痴呆俳句」として論議を呼んだ句。精神の弛緩よりむしろ禅の無の境地ではなかろうか。俳句はこういう無思想性があるからオソロシイ。そして俳人も。(井川博年)
July 291996
月下美人膾になつて了ひけり
阿波野青畝
咲いたときには、大騒ぎされる月下美人。私も、深夜連絡を受けてカメラ片手に見に行ったことがある。その花も、一夜明ければ膾(なます)となる。食べた人によれば、美味とはいえないそうだ。あるいはこの句、人間の美女にかけてあるのかもしれない。だとすれば、作者は相当に意地が悪い。『俳句年鑑・平成五年版』(角川書店)所収。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|