August 051996
木の根に晝寝餓ゑに酔ひたる如かりき
中村草田男
敗戦直後、昭和21年の作品。前書きに「ある人の打語れる話、自ら句になりて」とある。みんなが餓えていた時代。空腹もはるかに通り越すと、たしかに酔ったような心持ちになる。このまま、とろとろとあの世へ行ってしまっても構うものかという気分……。(清水哲男)
August 041996
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島
森 澄雄
この僧はもちろん禅僧であろう。黒の僧服と涼しげな青い頭。乗り物はもちろん新幹線の「こだま」。取り合わせの意表を突いた面白さが、発表当時評判となった。(井川博年)
August 031996
蚰蜒といふ字は覚えおく気なし
北野平八
蚰蜒を、さて何と読むか。原句には振り仮名がついている。そりゃ、そうだ。漢字コンクールのトップクラスでも、読めるかどうか。答えは「げじげじ」。字も覚えたくないが、本体ともあまりお近づきにはなりたくない。夏の嫌われ者でも有名虫(?)だけあって、昔からけっこう蚰蜒の句は多い。「蚰蜒に寝に戻りたる灯をともす」(中村草田男)「げじげじや風雨の夜の白襖」(日野草城)など。『北野平八句集』所収。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|