August 061996
原爆の日の洗面に顔浸けて
平畑静塔
広島への原爆投下は、午前八時十五分だった。そのことを知る作者は、しばし洗面の水から顔をあげられない。やり場のない哀しみと、そして自分が今こうして生きてある不思議とを、瞑目しつつ思うのである。この作者の姿と気持ちは、そのままで黙祷する人々のそれと通い合っている。(清水哲男)
August 051996
木の根に晝寝餓ゑに酔ひたる如かりき
中村草田男
敗戦直後、昭和21年の作品。前書きに「ある人の打語れる話、自ら句になりて」とある。みんなが餓えていた時代。空腹もはるかに通り越すと、たしかに酔ったような心持ちになる。このまま、とろとろとあの世へ行ってしまっても構うものかという気分……。(清水哲男)
August 041996
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島
森 澄雄
この僧はもちろん禅僧であろう。黒の僧服と涼しげな青い頭。乗り物はもちろん新幹線の「こだま」。取り合わせの意表を突いた面白さが、発表当時評判となった。(井川博年)
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