October 091996
すっぽりカーテン女子寮は青無花果
小堤郁代
昔住んでいた集合住宅の裏手に、某女子短大の寮があった。夕暮れ過ぎともなると、いっせいにカーテンが引かれて、まさに青い無花果(いちじく)の観。住人も、みんなまだ青い果実。のぞくつもりじゃないけれど、帰宅のたびにいやでも目に入った。寮全体がじいっと息を詰めて何かを警戒しているような雰囲気は、かえって不気味に思えたものだ。あのころ毎夜きちんとカーテンを引いていた乙女らは、いま、花も実もある人生を生きているだろうか。(清水哲男)
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