1996ソスN11ソスソス1ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 01111996

 少女の素足路地へすつ飛ぶ十一月

                           能村登四郎

れぞれの月には、それぞれのイメージがある。たとえば北村太郎の詩に「五月はみがかれた緑の耳飾り」という有名なフレーズがあるように……。ただ、十二カ月のなかでも、イメージのわきやすい月とそうでない月とがあって、十一月などはわきにくい月のトップ・クラスではなかろうか。したがって、佳句も少ない。そんななかで、私が好きな句はこれである。元気のいい女の子になかば見惚れている作者の人生暦もまた、はや十一月というところに妙味がある。(清水哲男)


October 31101996

 竜胆は若き日のわが挫折の色

                           田川飛旅子

胆(りんどう)は、さながら「秋の精」のように美しい。吸い込まれるような花の色だ。しかし、その色を「挫折の色」とする人もいる。花の色が美しいだけに、傷の深かったことが想像されて、いたましい。挫折の中身はもちろん不明だが、失恋などではなくて、むしろ青春期の思想的ないしは政治的な挫折だと私は読んでおく。「挫折」という言葉を俳句で使った人を、他に知らない。ところで、あなたにかつて挫折の時があったとすれば、その「挫折の色」はどんな色でしょうか。(清水哲男)


October 30101996

 紅葉せり何もなき地の一樹にて

                           平畑静塔

化の日を中心にした今度の連休には、紅葉の名所にたくさんの人たちが繰り出すことだろう。それはそれで結構なことではあるが、名所の紅葉だけが紅葉ではない。たまにはこの句のような一樹にも、目をむけたいものだ。ところで、私が生まれてはじめて見た(!)本物の俳人は、静塔だったと記憶している。それこそ嵐山の紅葉の頃、京大の教室で行なわれた講演を聞きに行って、見た(!)のである。もう三十年以上も前の話。講演の中身はおろか、タイトルすらも忘れてしまった。(清水哲男)




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