1996ソスN11ソスソス11ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 11111996

 岩手けん岩手ちょうあざ鰯雲

                           山口 剛

葉遊びだが、「いわ」の音韻がよく利いていて、たまにはこういう句も面白い。ほっとする。いつか見た岩手の青空を思い出した。作者は岩手県宮古市在住。そしてもうひとつ思い出したのが、荒川洋治がどこかで紹介していた中学生の句。「群馬県異常乾燥注意報」というものだ。これまた、私は大いに気に入っている。五七五と短くたって、いろいろできるのである。同人誌「鰭ひれ」第4号(96年11月)所載。(清水哲男)


November 10111996

 闇に鳴く虫に気づかれまいとゆく

                           酒井弘司

冬にかかると、虫の音も途絶えがちになる。そんなある夜、作者は道端の草叢で鳴く虫の音を耳にした。たった一匹の声らしい。そこで作者は、機嫌良く鳴いているこの遅生まれの虫を驚かすまいと、忍び足で行き過ぎていくというわけだ。このとき、酒井弘司はまだ高校生。この若年の感受性は天性のもので、その後の俳句人生を予感させるに十分な才質というべきだろう。『蝶の森』所収。(清水哲男)


November 09111996

 大阪はしぐれてゐたり稲荷ずし

                           北野平八

ある大阪は場末の町。風采のあがらない初老の男と安キャバ勤めとおぼしき若い女とが、うらぶれた食堂に入ってくる。外は雨。男が品書きも見ずに、すっと稲荷ずしを注文すると、「なんやの。こんなさぶい時に、つめたいおイナリさんやなんて」。そこで男が毅然としていうのである。「ええか、大阪はしぐれてゐたり稲荷ずし、や。な、ごちゃごちゃ言わんとけ」。「なに、それ」。「キタノヘイハチや」。「きたの……って。聞かん名前やなぁ。……ああ、おネエちゃん、ウチはアツカンや。それとタマゴ焼きと、あとはな……」。どこまでもつづきそうな大阪の時雨の夜である。『北野平八句集』所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます