1996ソスN11ソスソス24ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

November 24111996

 毛皮ぬぎシャネル五番といふ匂ひ

                           杉本 寛

の場合「香り」ではなくて「匂ひ」でなければならない。その理由は、作者自身が書いている。「ホテル・オークラでの所見。勿論私に香水の種類は解らないが、同行の友が教えてくれた。モンローの下着代わりと、わざわざつけ加えて」。つまり、野暮な男どもの好奇の対象としてのシャネルなのだから、「匂ひ」でなければ句が成立しないのだ。香水といえば、タクシーの運転手の話を思い出した。「我々の最大の敵は煙草の煙じゃありません。女性の香水の匂いなんですよ。涙は出る、ひどいのになると吐き気までしてきます。でもねえ、まさかお客さんに、風呂に入ってきてから乗ってくださいよとも言えませんしね……」。(清水哲男)


November 23111996

 博多場所しぐれがちなる中日以後

                           下村ひろし

分の隙もない、見事な決め技だ。上下漢字四文字の間にひらがな七文字を挟んでみせるなんぞは、確実に技能賞ものだろう。技法と中身の呼吸がぴたりと合っている。そして、情緒てんめん。芸で読ませる句のサンプルといってもよいと思う。ただし、素人がうっかりこの技に手を出すと自滅する。型がきれいなだけに、負けるとみじめさは倍になる。この句でも、どこかに作者の得意顔がちらついていなくもなく、考えるほどに難しい手法ではある。(清水哲男)


November 22111996

 夕焼は全裸となりし鉄路かな

                           あざ蓉子

あ、わからない。いや、わかるようでわからない。実は、この句。この夏の「余白句会」に蓉子さんが熊本から引っ提げてきた句のひとつで、結構好評であった。その後「俳句研究」9月号に掲載され、「俳句」11月号の鼎談(阿部完市・土生重次・青柳志解樹)でも話題になった。ポイントは「夕焼は」の「は」だろう。これを「に」にするとわかりやすいが凡庸となる。鼎談で阿部氏が述べているように、切字に近い「は」だと思う。そう理解すると、夕焼も鉄路もひっくるめての全裸という趣き。大いなる輝き。無季句と読みたいところだが……。(清水哲男)




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