December 201996
横顔の記憶ぞ慥か賀状書く
谷口小糸
賀状の友が、年々増えてくる。「今年こそは会いたいもの」と書きながら、十年くらいはすぐに経ってしまう。ましてや遠い地にある幼いときの友人ともなると「うつし身の逢ふ日なからむ賀状書く」(渡辺千枝子)という心持ち。面ざしの記憶も薄れがちだが、作者にははっきりと横顔だけはよみがえってくる。その昔、正対して顔を見られなかった初恋のひとでもあろうか。年賀状を書いていると、実にいろいろな過去が顔をあらわす。「慥か」は「たしか」。(清水哲男)
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