ヘ耗子句

February 0321997

 バー温し年豆は妻が撒きをらむ

                           河野閑子

つものように飲んでいると、他の客の言葉で、今日が節分であることに気づかされた。「しまった」と思うが、これから帰宅しても、子供たちと豆を撒くのには時間が遅すぎる。外は寒いし、店内は暖かくていい気分だ。それに、万事こういうことにはきちんとしている妻のことだから、自分がいなくとも、豆を撒いているにちがいない。もう少し飲んでから、帰るとしようか……。という、酒飲みならではの心理の綾。とっさの自己弁護であり自己弁解でもある。飲まない人には、面白くも何ともない句かもしれないが。(清水哲男)




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