February 111997
まひる梅の咲くさえ朧愛人あり
末永有紀
桜ならば「朧(おぼろ)」が似合うが、作者は梅の咲いている様子が「朧」だと言うのである。しかも、輪郭のくっきりした真昼の梅をさえ、ぼおっと感じているのだ。すなわち、作者には「恋人」ではなくて、世間に秘めた「愛人」がいるからである。危険な関係のこの上ない甘美さが、きりりとした梅の花をすら朦朧とした存在に変えてしまう。そういう句なのデス。羨ましくもあり、おっかなそうでもあり……。(清水哲男)
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