1997ソスN2ソスソス19ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 1921997

 メロンパン体内すこし朧なり

                           奥坂まや

の句を、どうかメロンパンのように味わっていただきたい。というのも、以前、俳句雑誌ではじめて読んだときには、ひどく気に入った。友人たちにも、ずいぶんと吹聴してまわった。身体的に表現された抒情が、とても素晴らしいと感じられたからである。ところが、しばらくするうちに、一時的にだが、つまらなくも思われてきた。しょせんは、机上で考えた句じゃないか、小賢しい句だなどと……。しかし、またいつしか、やはりこの句は素敵だなと思い直したり、あっちへ行ったりこっちへ来たりと、私にとっては面倒な作品となってしまった。うーむ。「朧」は「おぼろ」。『列柱』所収。(清水哲男)

ロンパンの好きなひとにはすぐわかる。あのパンの衣をめくって見れば、ほら、ほのかに春の衣の朧ろなような明りが射して、あたかも胎内にいるよう……。朧をこのように見事に表現した例はない。メロンパンの句の傑作であろう。パンはパンでもあんパンなら三好達治に「あんぱんの葡萄の臍や春惜しむ 」があり、こちらもあんパン句の傑作であろう。奥坂さんはこの句集により俳人協会新人賞を受賞。一躍若手俳人のスターとなった。『列柱』所収。(井川博年)


February 1821997

 弟は漫画が好きで春の風邪

                           田野岡清子

いですね、こういう姉と弟との関係は……。熱があるのだからおとなしく寝ていればよいものを、いつの間にか起き上がって漫画本に見入っている弟。「しょうがないわねえ」と苦笑する姉。風邪は風邪でも、春の風邪はどこか陽性である。もっとも、いま流行のインフルエンザだと、熱が高すぎて漫画どころではないけれど。なお、俳句では「風邪」の表記だけだと季節は冬になる。(清水哲男)


February 1721997

 熊の子も一つ年とり穴を出づ

                           三橋敏雄

屈だけで読むと「当たり前じゃないか」というしかない句。だが、何度も舌頭でころがしているうちに、だんだん味がわかってくる。噛めば噛むほどに、味が出てくる。「熊の子も」の「も」が指差しているのは、他の冬眠する生物はもちろんだが、私たち人間の精神的な生活をも含んでいるようだ。でも、それを深刻に受け取るかどうかは読者の自由にゆだねられていて、いかにも俳句的な表現の妙を感じさせられる。「可愛らしい」と読んでもいいし、もっと生臭く読んでもいい。「俳句研究」(1997年3月号)所載。(清水哲男)




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