1997ソスN2ソスソス24ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 2421997

 ごうごうと鳴る産み月のかざぐるま

                           鎌倉佐弓

ょせん、男にはわからない句かもしれない。が、子供の玩具である風車が轟いて聞こえるという妊婦のありようには、出産への凛とした気構えが感じられる。やがて訪れる事態は甘いものではない。人生の一大事なのだ。作者には他に「手がさむし君のあばらに手をやれば」「受胎して象のあくびを眩しみぬ」などがある。いずれの句にも、どこかで風車がまわっている。『天窓から』所収。(清水哲男)


February 2321997

 春風や恥より赤きドレスを着て

                           中烏健二

て、どんな色だろう、「恥より赤き」色とは……。などと考えてみても、もちろんわかりっこない。そもそもが「赤恥」というときの「赤」それ自体が色彩ではないからだ。これは、作者のちょっとした思いつきで書かれた句。書いてみたら、作者にはなんだかとんでもなくトンチンカンな色彩が現出してきたようで、面白い味が出たというところか。春風のおおらかな気分ともマッチしている。言葉遊びの句には飽きてしまうものが多いが、少なくとも私のなかでは、この句、けっこう長生きなのである。『愛のフランケンシュタイン』所収。(清水哲男)


February 2221997

 トンネルを出るたびに溪春浅し

                           八木林之助

この鉄道だろうか。トンネルを出るたびに、パッと視界は明るくなるが、その明るさのなかにある溪谷には雪が残っており、まだ春色は出そろってはいない。これでは、旅先の寒さが思いやられるというものだ。誰もが一度は体験したような懐しい光景。それをスナップ写真的にではなく、動きのあるムービー的にとらえたところが、作者の腕のよさである。こんな句を読むと、どこか遠くへ行ってみたくなりませんか。「溪」は「たに」。(清水哲男)




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