March 041997
春暁や眠りのいろに哺乳瓶
河野友人
どこのどなたの眼力によるものかは知らねども、「味の味」(アイデア刊)という月刊PR誌に毎号掲載されている作品の選句センスは、なかなかのものだ。当方も、うかうかしてはいられない。この句は、今年の3月号に載っていた。早朝に目覚めた若い作者の目に、ぼんやりと見えてくる哺乳瓶。そっと赤ん坊に目をやると、まだすやすやと眠っている。はじめて父親になった実感が、じわりと涌いてくる時なのである。「眠りのいろに」という表現が、作者の幸福感を見事に裏づけている。私にも、そんな時期がたしかにあった。(清水哲男)
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