1997ソスN3ソスソス19ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 1931997

 ひらきたる春雨傘を右肩に

                           星野立子

わらかく暖かい雨。降ってきたので傘をひらくと、淡い雨なので、身構える気持ちがほどけて、自然と傘を右肩にあてる。少しくらい濡れたっていい、という気分。だから、句では「ひらきたる春雨傘を」という順序なのである。最初から春雨を意識していたのなら「春雨やひらきたる傘」となる。ま、そんな理屈は別にして、最近では、女性が傘を斜めにさして歩く姿を、とんと見かけなくなった。混み合う道を早足で歩いている習慣から、強情なほど垂直に持つ癖がついてしまったのだろうか。女性ならではの優美な仕種が、いつの間にかまたひとつ消えていた……。傘そのものの形態は、昔からちっとも変わっていないというのに。(清水哲男)


March 1831997

 春の夜や後添が来し灯を洩らし

                           山口誓子

い間やもめ暮らしだった近所の家に、珍しく遅くまで灯がともっている。再婚するという噂は耳にしていたが、どうやら噂は本当だったようだ。と、作者は納得し、微笑している。それでなくとも、春の夜には艶っぽい雰囲気がある。したがって、シチュエーション的にはいささか付き過ぎ、出来過ぎか……。永田耕衣に「春の夜や土につこりと寂しけれ」がある。むしろ、こちらの句にリアリティを感じるという読者も多いだろう。(清水哲男)


March 1731997

 韮青々と性欲純粋と思う

                           夏木陽子

は「にら」。ユリ科の多年草。というよりも、<レバニラ炒め>でおなじみの植物。句には、みずからの欲望と正対する姿勢が、韮の青さに託されてきっぱりと表現されている。若くあることの素晴らしさ。直球的感覚表現。性を曲球的に感じはじめるのは、個人差もあるだろうが、不惑の前後くらいからだろうか。このところ、渡辺淳一の『失楽園』が話題になっている。文体の甘さは気になるけれど、中年の性を直球的にとらえかえした労作だと思う。「こんなことをしていると、わたし達、地獄に堕ちるわよ」。ヒロイン凛子の直覚が、全巻を引っ張る。(清水哲男)




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