May 051997
大鍋のカレー空っぽ子供の日
西岡一彦
給食メニューの人気ランキングで、常にトップの座に君臨しつづけてきたカレーライス。子供たちは、本当にカレーが好きだ。私も好きだが、妙に凝った味のものよりも、そこらへんの店のありふれたものがよい。昔ながらの「そば屋のカレー」も独特な味がしてなかなかのものだが、時に飲み水のコップにスプーンを漬けて出してくる店があり、あれには閉口させられる。何の「まじない」なのだろうか。この句は、こどもの日のイベントが果てた後の感慨だろう。逞しい彼らの食欲に、人としての未来を感じ希望を感じている。それこそ妙に凝っていないところが、この句のよさである。(清水哲男)
May 052010
大鍋のカレー空っぽ子供の日
西岡一彦
今日は「子供の日」、大型ゴールデン・ウィークの最後の日でもある。みなさま身も財布もクタクタ……でしょうか? 例外なく子供はカレーライスが大好き。いや、大人だって例外ではない。好みによって、家庭によって、それぞれ工夫されたカレーライスが作られる。子供にも楽しみながら簡単に作ることができる。私が子供の頃の田舎では、肉は容易に入手できなかったけれど、肉のかわりに鮭缶や鯨肉入りのものをよく食べさせられ、おいしかった。さて、子供の日に何かの集まりで、お母さんたちが大鍋にどっさり作ったカレーが振る舞われたのだろう。子供たちが寄ってたかって、あっという間に大鍋が空っぽになってしまったーという情景をごく素直に詠んだ句である。妙にテクニックを凝らすよりも、このストレートさがむしろ好ましい。それでいて、中七「カレー空っぽ」というKR音の重ね方が、明るいリズム感を生んでいる。隠された計算だろう。かつて和歌山で毒入りカレー事件なる物騒な事件が起きたけれど、一人でしみじみスプーンを口に運ぶというよりは、子供であれ、大人であれ、大勢寄ってたかってワイワイとにぎやかに食べるほうが、カレーライスはおいしいに決まっている。レストランのコックさんが作ったものよりも、お母さんがさりげなく作ったカレーがいちばんおいしい。不思議な料理である。私たちが食べるカレーのスタイルはインドではなく、イギリスで作られたものだそうだ。清水哲男『「家族の俳句」歳時記』(2003)所載。(八木忠栄)
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