June 211997
ぶつぶつ言う馬居て青葉郵便局
加川憲一
作者は北海道の人。北海道は競馬馬の産地だが、この場合は脚の太い農耕馬だ。都会の郵便局と違って、田舎のそれはちょっとした社交場でもあり情報集積所でもある。貯金を引き出しに行って、ついつい局員と話しこんでしまったりする。そんなご主人を待ちかねて、馬がぶつぶつ文句を言っている図。周囲には濡れるような青葉。そして昔ながらの赤い郵便ポスト。詠まれてはいないがこのポストの赤は重要で、馬の濃褐色と青葉の緑にポストの赤が加わることで、絵に描いたような牧歌的風景が完成する。微笑して作者は、もう一度馬を見やり郵便局の戸口に目を向けたところだ。それにつけても、梅雨のない北海道は羨ましい。この句は、金子兜太が主宰する俳誌「海程」の掲載句を論じた『現代俳句観賞』(飯塚書店・1993)に載っている。(清水哲男)
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