1997ソスN7ソスソス26ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

July 2671997

 全員に傘ゆきわたる孤島かな

                           永末恵子

人島に大勢で漂着して、まずは手際よく全員に傘が配られた。これでとりあえず雨露だけはしのげるわけだが、なんだか変だ。もっと先に、配布すべき何かがあるような気がする。でも、それが何なのかは、なかなか浮かんでこない。全員が傘を手にしてポカーンとしている様が、なんとも滑稽だ。孤島漫画のコレクターだった星新一さんに、たくさん見せていただいたことがあるが、ポカーンとしたものにいちばん味わいがあった。この句も、立派な漫画になっている。無季。「ミルノミナ」(第2号・97年7月)所載。(清水哲男)


July 2571997

 百日紅この叔父死せば来ん家か

                           大野林火

起でもない話だが、この家が代替わりすれば、こうやって毎夏訪れることもなくなるのだろう。叔父も老齢だ。何事もなかったように、庭の百日紅(さるすべり)だけは咲きつづけるのだろうけれど……。百日紅の花は勢いがよく花期も長いだけに、しばしば逆に死のイメージと結びつけられてきた。独特の花の赤い色が、そうした連想をさらに助長するのかもしれない。鷲谷七菜子に「葬終へし箒の音や百日紅」がある。(清水哲男)


July 2471997

 遠雷や父の電車は絵の中に

                           柴崎昭雄

そがれ時、一天俄かにかき曇り、遠くでは不気味に雷が鳴りはじめた。遠雷(えんらい)の方角は、ちょうど父が働いている土地の上空のようだ。「傘は持っているだろうか」と、少年は心配する。「でも、この時間ならもう電車の中だろうな」と、壁に貼った自分の絵の中の電車を見やるのである。絵の中の電車は、いつものようにのんびりと走っている……。現実に遠くを走る電車から自室の絵の中の電車へと、素早く焦点を移動させているところが魅力的だ。そして、遠くにいる父をさっと身近に引き寄せた感性の遠近法も。『木馬館』所収。(清水哲男)




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