August 131997
ソーダ水うつむける時媚態あり
大須賀邦子
媚態(びたい)は、女性に特有の自己演出法である。半ば無意識に近い仕種も含むから、男にはなかなかそれとわからない。しかし、同性の目はごまかせませんよというのが、この句の眼目だろう。男女何人かで和気あいあいとソーダ水を飲んでいるシーン。何の変哲もなさそうな場であるが、女同士の間では目に見えぬ火花が散っている。だから、相手がうつむくたびに示す媚態が、気になって仕方がない。さながらソーダ水のあざとい色彩のように、目障りなのである。ひょっとすると、これは作者自身の媚態であり、そのことへの自己嫌悪かも知れぬ。そのほうが面白いかなとも思うが、いずれにしても女が女を見る目は恐いということ。(清水哲男)
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