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August 1981997

 松葉牡丹玄関勉強腹這ひに

                           中村草田男

房設備などなかった時代には、どこの家庭でも戸口や窓を開けっぱなしにして、夏をしのいだ。そんな家の中でも、涼しい穴場は板張りの廊下と玄関だった。しかし、さすがに大人は廊下や玄関で寝そべるわけにはいかない。勉強部屋もない子供が、ここぞとばかりに句のように腹這いになって本を読んだり宿題をやったりしたものである。勉強に飽きて玄関の軒下に目をやれば、埃まみれの松葉牡丹が暑くるしげに燃えている。そこで子供は、チビた鉛筆をほうり投げ、しばしまどろみの時に入るというのが定番であった。漢字を多用した句が、夏の午後の暑苦しさを的確に表現している。(清水哲男)




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