November 261997
焼芋を二つに折れば鼻熱し
吹田孤蓬
そのまんまの句。たしかに、焼芋は二つに折ってから食べる。折ると、湯気が鼻をつく。その一瞬をとらえた微笑ましい作品だ。いますぐに、焼芋を食べたくなった読者もいるのではないだろうか。私は、あまり食べない。ここ数年間は口にした覚えがない。なにせ戦後の食料不足時代に、芋ばかり食べていたので、どうしても当時のみじめな記憶が甦ってきて、食欲とは結びつきにくいからだ。最近、近くの武蔵野一中の創立五十周年記念スライドのためのシナリオを読んでいたら、弁当の中身は「芋だけだった」という記述に出会った。というわけで、わが世代は芋や南瓜には弱いのである。それと、焼芋を買って食べるという発想にもなじめない。とてつもない贅沢をするようで、後ろめたい思いがする。貧乏根性も、しっかり身についているらしい。(清水哲男)
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