June 041998
雨あとの土息づくや茄子の花
松本一枝
武蔵野市内の小学校の給食メニューに、今月が旬の食べ物として「茄子」があがっていた。昔は梅雨明け頃だったように思うが、今ではそういうことになってきたようだ。それはともかく、茄子は葉の蔭に淡い紫色の花をつける。よく見ると、なかなかに可憐で美しい花である。花になんて目もくれなかった少年時代に、この花だけには「ちょっと、いいな」と思った記憶がある。私の花への初恋だ。茄子は水をたくさんほしがる植物だから、さぞかし梅雨の季節は嬉しい気持ちだろう。作者にその知識があるかどうかは別にして、句は見事に雨上がりの後の茄子の花の美しさを表現しきっている。土が「息づく」と見えるのも、ひとつにはそこに茄子の花が咲いていたからである。野菜の花とは、総じて可憐であり命は短い。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|