June 221998
屋上にサルビヤ炎えて新聞社
広瀬一朗
サルビアはブラジルが原産地だ。いかにも南国の花らしく、この花には可憐なところも、はかないところもない。したがって、まさか疎ましく思う人はいないだろうが、じっくりと観賞する人も少ないだろう。とにかく、ちっちゃなくせにやたらと元気で勢いがよろしい。そんな花を、作者は新聞社の屋上で見かけて、新聞社の仕事の勢いに似合っているなと合点したところだ。サルビアは、新聞社のような人の出入りが激しい建物の傍に植えられていることが多く、美術館や博物館、あるいは公共の施設などの花壇でよく見かける。生命力の強い多年草であり、花期も長いからであろう。ところで、この花の色はふつう緋赤である(和名を緋衣草というくらいだ)が、我が「花のアンチョコ」で調べてみたら、世界中に750種類ほど分布しているそうだ。色も多様で、緋赤以外にもピンクや紫、はては白色の花もあると書いてあった。白いサルビアか……。これだったら、可憐でもあり、はかない感じがするかもしれない。見てみたい。日本でも咲いているようだから、見たことがあるのかもしれないけれど、白色なのでサルビアとは思わなかった可能性はある。(清水哲男) [東京新聞宇都宮支局・田島力氏からの情報提供] 品川駅港南口にある弊社(東京新聞)の屋上は人の出入りを想定していない、汚いアスファルト敷きの変哲もない場所でした。近くに食肉市場や汚水処理場があって悪臭が 絶えず、昼休みあたりに上がってくつろげるようなところではありませんでした。だれかが花の鉢を置いていたとは驚きです。私も一度思い屈したときに上がったことがあり、気を取り直してから職場に戻った記憶があります。広瀬氏がど んな思いで屋上に出てサルビアを見たのか、ふだん物静かだった方の激しい一面を見た思いがいたします。いま屋上は建て増し増築の五階となって、コンピュータールームに変じております。広瀬氏は平成6年9月に67歳で亡くなられました。
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