August 011998
ゴビの夏悟空のごとく飛びにけり
佐治玄鳥
玄鳥はサントリー会長佐治敬三さん。二年前に第一句集『自然薯』を刊行して話題になった。上の句は本年三月に刊行された第二句集『仙翁花(せんのうげ)』に収められている。企業のオーナーは忙しく国内外を飛びまわる。そうした折々の句が多い。これは「天山十五句」のうちの一句。なんとも大きく、ひろやかな句姿である。実際はキント雲ならぬ飛行機でゴビをひとまたぎだろうが、気持ちはむしろキント雲に乗って、ゴビの大地を悠々と見おろしながらひとっ飛びであろう。この大胆率直さはウイスキーならストレートの味わい。森澄雄氏の跋文にこうある。「大らかで、率直で、飾りがなく、人間そのままの正直で素直な感性で詠まれていることが何よりもこころよい」。文化を懸命に支援してきた企業人の土性骨が感じられる。(八木忠栄)
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