lfq句

November 20111998

 着ぶくれし子に発掘のもの並ぶ

                           浜崎素粒子

今の遺跡発掘の成果には目覚ましいものがあるが、発掘現場を詠んだ句は珍しい。子供は好奇心のカタマリだから、北風の吹くなかでも、飽きもせずに大人たちの作業を目を輝かせて眺めているのだ。その周辺に、次々と土器のかけらやら木片やらが置かれてゆく。「さわっちゃ駄目だよ」くらいは、言われているだろう。そんな泥だらけのものに興味はないので、さわりたくもないが、子供はそのうちに、きっと何かスゴいものが出てくるのではないかと、いつまでもその場を離れない。そんな子供の姿に、作者は目を細めている。着ぶくれた子供に、昔の自分を重ね合わせていてるのかもしれない。ここで、「子供」と「発掘のもの」とは、同時的並列的に詠まれている。しかし、よく考えてみれば、「子供」は未来へとつながる時間を持ち、「発掘のもの」は過去へとさかのぼる時間を持つ。この時間的垂直性を、眼前に並列させたところが、この句の面白さだ。なんでもなさそうな光景が、かく詠まれることにより、かく深みのある作品となった。「俳句文芸」(1998年2月号)所載。(清水哲男)




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