March 301999
ロゼワイン栄螺の腸のほろにがさ
佐々木幸子
上手な句ではない。が、ワインと栄螺(さざえ)との取り合わせに興味を魅かれた。私はワインが苦手なので、早速、ワイン好きの友人に取材した。「ロゼワインと栄螺は、味覚的に合うのかなア」。「試したことはないけれど、別に突飛な取り合わせとは思わないね」。「でも、テーブルの上での見た目がよくないな」。「そんなこと、本人が機嫌良く飲んだり食ったりしてるんだから、どうでもよろしい」。…てなわけで、この取り合わせは「まあまあ」だろうということに落ち着いた。はじめてパリに行ったときに、みんな山盛りのカラスガイを肴にワインをやっていたのに感心した覚えがあるので、基本的にはワインと貝類とは合うのだろう。ワイン好きの読者は、お試しあれ。口直しに(作者にはまことに失礼ながら)、とにかく「栄螺」といえばこの句だよというところを、見つくろって紹介しておこう。百合山羽公の「己煮る壷を立てたる栄螺かな」と加倉井秋をの「どう置いても栄螺の殻は安定す」だ。味覚よりも、作者は栄螺の存在そのものに哀しみを感じている。こういう句のほうに魅力を覚えるのは、私がもはや古い人間のせいなのだろうか。「味の味」(4月号・1999)所載。(清水哲男)
『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます
|