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April 2841999

 睡るとはやさしきしぐさ萩若葉

                           後藤夜半

んという「やさしい」句境だろう。このトゲトゲしい世相のなかに置いてみるとき、この句そのものが、さながら「萩若葉」のようである。「萩若葉」から人の寝姿を連想したところも非凡だが、作者の眼目はむしろ「睡る」姿を「しぐさ(仕草)」と捉えた点にありそうだ。「睡る」姿(動作)も、言われてみればたしかに仕草のうちではあるけれど、普通に言うところの「しぐさ」は、もう少し何らかのモーションを伴っている。「じっとしている動作」に、あまり「しぐさ」という言葉は使わないはずだ。そこにあえて「しぐさ」と言葉を当ててみたわけで、流線の枝にさみどり色の若葉を散らして微風に揺れる萩の姿形に、ぴたりと合致したのだった。「仕草」ではなく「しぐさ」としたのは、むろん「萩若葉」のやわらかさに照応させるためである。まさに名人・夜半の、静かなる得意の顔が浮かんでくるような句ではないか。作者の意識のなかにある「睡る」人は、もちろん女人だろう。古来、萩は若葉の頃から、男には悩ましい植物として詠まれてきた。『底紅』(1978)所収。(清水哲男)




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