May 301999
こわれてもあてにしている扇風機
南部さやか
小学校五年生の作品。扇風機が必要な真夏というよりも、これから必要になる初夏の句と読んだほうが面白い。たぶん、この扇風機は、昨年の夏の終わり頃にこわれてしまったのだ。すぐに修理に出しても、来年の夏までは使わないのだからということで、まだそのままにしてある。そのうちにと思っているうちに、早いものでだんだんと再び必要な季節が近づいてきた。家族の間では、もうそろそろ修理に出さないと間に合わないという思いはあるのだけれど、一方で、電源を入れて叩いたりすれば、またいつもの夏と同じように勢いよく回転しだすような気もしている。すなわち、なんとなく「あてにしている」のだ。作者は素直に、そんな家族の気持ちを代弁している。鋭くも可笑しい着眼だ。家電製品の故障については、しばしばこうした気持ちになる。その昔、鳴らなくなったラジオを叩いてみたら鳴りだしたという経験は、多くの方がお持ちだろう。ところが最近では、画面がフリーズするとパソコンを叩く人がいる。パソコンが家電製品になってきた証拠である。『第二十七回・全国学生俳句大会入賞作品集』(1997)所載。(清水哲男)
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