August 281999
駅弁にはららご飯の加はりぬ
伊藤玉枝
頻繁に旅をしている人だろうか。それとも、駅弁を売っている人なのか。季節によって、駅弁の種類も変化する。新しいメニューに、今日から「はららご飯」が登場した。いよいよ秋だなあ、という感慨。北海道の読者ならご存知だろうが、「はららご飯」は「はらら・ごはん」ではなく、「はららご・めし」と読む。「はららご」には「腹子」という漢字をあて、主として鮭(さけ)の卵のことを言う。塩漬けにして食べるのが一般的か。この駅弁を食べたことはないけれど、いつか機会を得たいと思う。東京のデパートでよく開かれる「北海道名産市」あたりに出るのかもしれない。話は飛ぶが、はじめてヨーロッパで汽車の旅(パリからアムステルダムまで)をしたときに、列車環境はすこぶる快適だったのに、何か物足らない気もした。駅弁がなかったせいだ。まさか「はららご飯」があるなどとは思わなかったけれど、停車する駅ごとにきょろきょろと見回してみても、駅弁に代わりうる食べ物は売っていない。腹にたまりそうなものといえば、バナナくらいだった。せめて飛行機の機内食程度のものを売ってもよさそうなのに……。素早く作って素早く売り捌くという発想が、性に合わないのかもしれない。(清水哲男)
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