November 251999
蕪汁に世辞なき人を愛しけり
高田蝶衣
蕪汁(かぶらじる)は、蕪を入れたみそ汁。寒くなると蕪に甘味が出てくるので、より美味になる。素朴で淡泊な味わいが「世辞なき人」に通じていて、よくわかる句だ。農家だった頃の我が家では、冬の間は毎日のように食べていた。みそ汁ばかりでは飽きてくるので、すまし汁にもしたが、私はこちらのほうを好んだ。この句も、すまし汁のほうではないだろうか。みそ汁よりも、もっと蕪の素朴な味が生きてくるからだ。そして私はといえば、あつあつのすまし汁をご飯の上にじゃーっとかけて食べていた。この食べ方を「ネコ飯」と嫌う人もいるけれど、別の表現をしておけば、ほとんど「雑炊」だとも言えるのであり、寒い日にはとても身体が暖まる。いつの頃からか、じゃーっとはやらなくなったが、蕪の入った雑炊はいまだに好物だ。が、昨今の東京では、なかなか美味な蕪にはお目にかかれない。夏のキュウリと冬のカブ。好物の味が、どんどん下落していく悲しさよ。ところで、ネコはカブを食べますか。(清水哲男)
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