当ページの2000年対策。停電でも見られる人のために正月三日付まで書いておくことにする。




1999ソスN12ソスソス21ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

December 21121999

 山ごーごー不安な龍がうしろに居り

                           阿部完市

季ではあるが、「山ごーごー」は荒れる冬山に通じる。しかも「不安な龍」とくれば、ちょうど1999年の年末期にも通じる。二十年以上も前に作られた句だから、もちろん2000年問題が意識されていたわけではない。が、なんだか今日の事態を予言したような句に見えてきてしまう。その意味でも、怖い作品だ。明けて2000年。何が起きるのか、何も起こらないのか。誰にも予測はつきかねるが、一つ言えることは、この「不安」の種は人がみずから蒔いたものであるということだ。この事実だけは動かない。したがって「山」も「龍」も、その責を負うわけにはまいらない。「自己疎外」という懐しい哲学用語が、極めて具体的によみがえってきた世紀末。単なる数字の行列を横切るだけで、過去これほどまでに社会的な不安が際立ったことはない。人間もたいしたことはないなと、いまごろは「山」も「龍」もがあざ笑っていることだろう。関連で、同じ作者の句をもう一つ。「いま憂季とや雪雲と何十の歌謡」。こちらは大晦日恒例の番組「紅白歌合戦」に通じていると読める。2000年まで、あと11日。『春日朝歌』(1978)所収。(清水哲男)


December 20121999

 親も子も酔へばねる気よ卵酒

                           炭 太祇

つあつを飲むから、汗が出る。したがって、昔から風邪の熱さましとして愛飲されてきた。作者は江戸期の人。アルコール分が少ないので、子供でも飲めるのが卵酒(玉子酒)だ。家族みんなで楽しめる。家の誰かが風邪を引くと、さっそく玉子酒を作り、みんなでお相伴にあずかるというわけだ。風邪引きも、また楽し……かな。とはいえ、やはり酒は酒だ。飲むうちに、いい心持ちになってくる。寝るには早い時間だが、ままよ、眠くなったら寝ちまおうぜと、親子揃っての暢気な気分がまた心地よい。ところで、あなたは玉子酒を作ったことがありますか。講談社から出たばかりの『新日本大歳時記・冬』を見ていたら、林徹氏がレシピ付きの解説を書いていたのでお裾分け。「一合の日本酒に砂糖大さじ三杯を加えて煮立て、酒が沸いてアルコール分が十分蒸発したとき、マッチの火でアルコール分を燃やしきり、これに卵黄をそそいでよく掻き回し、煮詰まらないうちに飲む」のである。お試しください。ただし、パソコンの無料ソフトと同様に、この作り方を実行して、いかなる事態があなたやあなたの家族に起ころうとも、当方は一切責任を負いかねますのでご了承を(笑)。(清水哲男)


December 19121999

 雪吊を見おろし山の木が立てり

                           大串 章

の重みで庭木などが折れないように、幹にそって支柱を立て、縄を八方にして枝を吊るのが「雪吊(ゆきつり)」。金沢・兼六園の雪吊は有名だ。果樹も「雪吊」で守るが、「山の木」からすれば過保護としか見えないだろう。句は、そうした良家の子女のような扱いを受けている樹木を、憮然として眺めている「山の木」を詠んでいる。作者には『山童記』という句集もあるくらいで、かつての「山の子」はこういうことには敏感なのだ。もとより、私もまた……。砕いて言っておけば、ここにあるのは都会者を見る田舎者のまなざしである。句にはさしたる皮肉もないだけに、それだけ切ない心情が伝わってくる。一見地味な姿の句であるが、私のような田舎育ちにはビビビッと来る句だ。ところで、東京で「雪吊」作業を体験してみたい方へのお知らせ。都立井の頭自然文化園(武蔵野市御殿山1-17-6・TEL0422-46-1100)では、12月25日(土)午前9時より園内で作業をするので、一般参加を呼びかけている。参加費、入園費は無料。定員20名。昼食持参のこと。希望者は電話してみてください。別に私は、井の頭公園のマワシモノではありませんよ(笑)。「山の子」の私としては、当然のことながら参加はしませんが。『百鳥』(1991)所収。(清水哲男)




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