January 012000
星屑と云ふ元日のこはれもの
中林美恵子
元日の句は多々あれど、じわりと心に染み入ってくるような美しい句はそんなにあるものではない。どことなくクリスマスの余韻を引きずっているような雰囲気もあるが、元日に「こはれもの」をそっと重ね合わせた発想は素晴らしい。しかも、スケールはとてつもなく大きいのだ。作者も着想したときには、きっと「やったア」と思ったでしょうね。うむ、年頭にこの一句を据えられたことで、当ページの未来は開けたも同然だ。……というほどに、気に入ってしまった。いま出ている角川版歳時記の一つ前のバージョンで見つけた句だ。ところで掲句とは関係ないのだが、実作者の方々に一言。近着の俳句雑誌で「紀元2000年」と表記した句を散見する。むろん「西暦紀元」の意だとはわかるが、私はこの表記に賛成しない。というのも、日本では戦前戦中に「紀元」というと、すべてが「皇紀」として認識されていたからだ。「皇紀」は1872年(明治5年)に、国家が神武天皇即位の年を西暦紀元前660年と定めたものだ。この物差しに従うと、今年は「紀元2660年」という勘定になる。いまでも、一瞬「紀元」即「皇紀」と反応する人は大勢いるので、厭な時代を思い出してしまうことにもなる。加えて、後世の人が「西暦紀元」なのか「皇紀紀元」なのかと混乱する危険性は十分にあり、当の作者にしても「歴史に無知な俳人だ」と、いらざる誤解を受けかねないからでもある。(清水哲男)
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