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January 0412000

 買初にかふや七色唐辛子

                           石川桂郎

初(かいぞめ)は「初買」とも言い、新年になって初めて物を買うことだ。といっても、スーパーで醤油や味噌などを買うのとは違う。新年を寿ぐために、いささか遊び心の入った買い物をすることを指している。だから、いろいろと買うなかで、本年は「買初となすしろがねの干鰈」(岡本差知子)と思い決めたりする。句として公表するとなれば、おのずから作者のセンスが問われるわけだ。作者は「七色唐辛子」を「買初」とした。なかなかに小粋な選択ではないか。買初コンテストがあるとしたら、必ずベスト・テンには入りそうである。「とうんとうんと唐辛子、ひりりと辛いは山椒の実、すはすは辛いは胡椒の粉、けしの粉、陳皮の粉、とうんとうんと唐辛子の粉」と、これは江戸の町を歩いた振り売りの七色唐辛子屋の売り声だそうな。陳皮(ちんぴ)は蜜柑や柚子の皮。これだと五色しかない計算になるが、実際に五色しかなかったのか、あるいは売り声の調子を出すために二色が省かれているのか。ちなみに「七色唐辛子」は江戸東京の呼び方で、関西では「七味(しちみ)」と言う。日頃の私は「一味」党だけれど、買初に「一味」では、「一」はよくても色気が足りなさ過ぎる。今年の買初は、何にしようかな。(清水哲男)




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