「MUSIC MAGAGINE」。私には殆ど理解不可能な雑誌だが「とうようズ・トーク」だけは面白い。




2000ソスN2ソスソス21ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

February 2122000

 大丈夫づくめの話亀が鳴く

                           永井龍男

語は「亀鳴く」。春になると、亀の雄が雌を慕って鳴くのだそうな。もちろん、鳴きゃあしない。でも、亀を見ると鳴いてもよさそうな顔つきはしている。浦島太郎に口をきいた亀は海亀(それも赤海亀の「雌」だろうという説あり・昨夜のNHKラジオ情報)だが、俳句の亀は川や湖沼に生息する小さな亀だ。どんな歳時記にも「川越のをちの田中の夕闇に何ぞと聞けば亀のなくなり」という藤原為家の歌が原点だと書いてある。さて「大丈夫」という話ほどに、「大丈夫」でない話はない。ましてや「大丈夫づくめ」とくれば、誰だって何度も眉に唾する気持ちになる。そんなインチキ臭い話につき合っているうちに、作者はだんだんアホらしくなってきて、むしろ逆に愉快すらを覚えたというところか。鳴かない亀の鳴き声までが聞こえてくるようだと、気分が落ち着いた。ところで、この話を持ちかけている(たぶん)男は、相当なお人よしなのである。口車に乗せようとしても、その端から相手に嘘を悟られていることに気がつかないのだから……。うだつのあがりそうもない営業マンに多いタイプだ。しかし、彼の嘘つきの背景には、妻子を抱えての生活があるのかもしれないし、他に必死の事情があるのかもしれない。そう思うと、作者は笑っているが、なんだかとても辛くなる句だ。『雲に鳥』(1977)所収。(清水哲男)


February 2022000

 朝寝して旅のきのふに遠く在り

                           上田五千石

語は「朝寝」で春。春眠に通じる。長旅から戻った疲れから、時間を忘れて遅くまで眠った。目覚めたときに一瞬、自分の寝ている場所がどこかと確認し、自宅であることに安堵して、またうつらうつら……。心地よいまどろみ。「きのふ」までの遠い旅の余熱が残っている気分が、よく出ている。海外から戻ったときなどには、とくにこうした気分の朝を迎える。旅先での緊張度が、いかに重いものかを実感させられるときだ。俗に「枕がかわると眠れない」などと言うが、旅行には必ず自分の枕を携行する友人がいる。ライナスの毛布みたいだけれど、案外そういう人は多いのかもしれない。私の場合は、大昔の学生運動でのごろ寝の習慣が身に付いてしまい、どんな環境でも一応は寝ることができる。ただ、だんだん年齢を重ねてくるにつれ、身体がぜいたくになってきたのか、静かな部屋でゆったり寝たいと思うようにはなってきた。よほどのことでもなければ、もう教室の机の上や公園のベンチで寝ることもないだろう。青春という名のはるかに遠い旅の日々よ。「俳句とエッセイ」(1982年5月号)所載。(清水哲男)


February 1922000

 もやし独活鉄砲かつぎして戻る

                           高本時子

活(うど)は、関東武蔵野の名産。一昨日、武蔵野市で恒例の品評会と即売会が開かれ、知りあいが求めてきたもののお裾分けにあずかった。ひょろ長いので、句のように「鉄砲かつぎ」して持ち帰り(バスの中では、さすがにuprightに持たざるをえなかったけれど)、夕食時に間に合った。早春の香り。シャキシャキとした歯触りで、奥行きのある美味。生そのままで酒のサカナにしても似合うが、生産者は天麩羅にすると美味いよと言っている。それにしても「もやし独活」とは、言いえて妙だ。山野に自生する「山独活」に対してのネーミングで、特殊な栽培法により食べられる茎の部分をできるだけ長く伸ばすところから、「もやし」と言ったのである。ひょつとすると、正統山独活愛好派からの揶揄が入っている呼び名なのかもしれない。かの高村光太郎に「山うどのにほひ身にしみ病去る」がある。まさか独活を食べたせいで「病去る」となったわけではないのだが、早春の訪れを告げる「にほひ」に接して、体調よろしきはそのおかげだと感じている心情が嬉しい。よくぞ日本に生まれけり、である。(清水哲男)




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