ロシアか北朝鮮か。どっちとでもいいから点数を稼ぎたい首相。外務大臣の影が極端に薄い政権の珍。




2000ソスN9ソスソス8ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

September 0892000

 手拭に桔梗をしほれ水の色

                           大高源五

古屋から出ている俳誌「耕」(加藤耕子主宰)をご恵贈いただいた。なかに、木内美恵子「赤穂義士・大高源五の俳句の世界」が連載されていて、飛びついて読んだ。源五が俳人(俳号・子葉)であり、其角と親しかったのは知っていたが、きちんと読んだことはない。掲句は、木内さんが九月号に紹介されている句で、一読、賛嘆した。詠んだ土地は、江戸から赤穂への途次に宿泊した見付の宿(現・静岡県磐田市)だと、これは源五が書いている。残暑の候。そこに「丸池」という美しい池があり、源五は首に巻いていた「手拭」を水に浸した。池辺には、桔梗の花(と、これは私の想像)。「しほれ」は「しぼれ(絞れ)」である。句は、桔梗を写す水に浸した真っ白い手拭いを絞るときに、桔梗の花のような色彩の「水の色」よ、出でよと念じている。念じているというよりも、桔梗色の水が絞り出されて当然という感覚だ。「桔梗をしほれ」とは、そう簡単には出てこない表現だろう。本当に、桔梗の花を両手で絞るかの思いと勢いがある。源五がよほど俳句を修練していたことがうかがえるし、その前に、動かしがたい天賦の才を感じる。其角とウマが合ったのも、わかる気がする。赤穂浪士切腹に際して、其角が次の句を残したのは有名だ。「うぐひすに此芥子酢はなみだかな」。源五を生かしておきたかった。(清水哲男)


September 0792000

 秋の雲ピント硝子に映りけり

                           籾山庭後

書に「海岸撮影」とある。詠まれたのは、明治末期か、大正初期だ。海岸の写真を撮るべく写真機をセットしたら、ファインダー(ピント硝子)に雲が映った。その雲の形は、既に秋のそれだった。それだけの写生句だが、写真機を通じて秋の雲にはじめて気がついたところに、作者の喜びが表現されている。「映りけり」が、それを伝えている。写真の面白さの第一歩は、このあたりにあるのだろう。人間の目は、あらゆる風景や物などを、いわば勝手に見ているので、見ているはずが気がつかないことも多い。作者の肉眼には海岸の形状だけが見えていて、その上に浮かぶ雲などは、見えてはいても見ていなかったのである。それが写真機の「ピント硝子」を覗いてみると、見えていなかった雲までが形として鮮明に飛び込んできた。写真機の目は風景を切りとり、切り取ったシーンについてはすべてを公平に映し出すから、人間の目とは似て非なる目だ。ましてや、この写真機はピントとフレームを決めたら、フィルムならぬ「乾板(かんぱん)」を差し込んで写すタイプのもの。撮影者が「ピント硝子」を見るためには、黒い布を被らなければならない(昔の学校に来た写真屋さんが、そんな格好で記念写真を撮ってくれましたね)。黒い布で自分の目が現実の外界から遮断されることで、余計に、それまで見えていなかったものが見えてくる理屈となる。「ピント硝子」は、磨りガラス製。海岸風景は、逆さまに映っている。『江戸庵句集』(1916)所収。(清水哲男)


September 0692000

 やはらかに人わけゆくや勝角力

                           高井几菫

力(相撲)は、元来が秋の季語。勝ち力士の所作が「やはらかに」浮き上がってくる。六尺豊かな巨漢の充実した喜びの心が、よく伝わってくる。目に見えるようだ。相撲取りとは限るまい。人の所作は、充実感を得たときに、おのずから「やはらか」くなるものだろうから……。だから、私たちにも、この句がとてもよくわかるのである。もう一句。角力で有名なのは、蕪村の「負まじき角力を寝物がたり哉」だ。負け角力の口惜しさか、それとも明日の大一番を控えての興奮か。角力を「寝床」のなかにまで持ち込んでいる。蕪村は「角力」を「すまひ」と読ませていて、取り口を指す。さて、解釈。蕪村の芝居っ気を考えれば、負け相撲の口惜しさを、女房に訴えていると解釈したいところだ。が、この「寝物がたり」のシチュエーションについては、昔から三説がある。力士の女房との寝物語だという説。そうではなくて、相撲部屋での兄弟弟子同士の会話だとする説。もう一つは、力士ではなく熱狂的なファンが妻に語っているとする説。どれが正解だとは言えないが、そこが俳句の面白さ。読者は、好みのままに読めばよい。ファン説は虚子の解釈で、これを野球ファンに置き換えると、私にも思い当たることはあった。すなわち「一句で三倍楽しめる」句ということにもなる。(清水哲男)




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