ドボルザークの「家路」。「森の梢暮れそめて」が歌い出しの歌詞をご存知の方、ご教示願いたし。




2001ソスN6ソスソス13ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 1362001

 牛も馬も人も橋下に野の夕立

                           高浜虚子

里離れた「野」で夕立に見舞われたら、まず逃げようがない。どうしたものかと辺りを見回すと、土地の人たちが道を外れて河原に下り、橋の下に駆け込んでいくのが見えた。これしかない。作者も急いで駆け込んでみたら、人ばかりか「牛も馬も」が雨宿りをしていた。「牛も馬も」で、夕立の激しさが知れる。そこで「牛も馬も人も」が、所在なくもしばしいっしょに空を見上げて、雨の通り過ぎていくのを待つのである。この橋は、木橋だろう。だとすれば、橋を打つ雨の音もすさまじい。実景を想像すると、なんとなく滑稽でもあり牧歌的にも思えてくるのは、「野の夕立」の「野」の効果だ。上五中七で、ここが「野」であることは誰にでもわかる。にもかかわらず、虚子はあえて「野」を付け加えた。何故か。「野」を付け加えることで、句全体の情景が客観的になるからである。かりに「夕立かな」などで止めると、句の焦点は橋の下に集まり、生臭い味は出るが小さくまとまりすぎる。あえて「野」と張ったことにより、橋の下からカメラはさあっとロングに引かれ、橋下に降りこめられた「牛も馬も人も」が遠望されることになった。大いなる自然のなか、粗末な木の橋の下に肩寄せ合うしかない生きものたちの小ささがより強調されて、哀れなような情けないような可笑しさがにじみ出てきた。だが、もう一つの読み方もできる。虚子は最初から、橋の下なんぞにはいなかった。それこそ、彼方に河原が見える料理屋かなんかにいて、この景色を見ていただけ……。となれば、句の魅力はかなり褪せてしまう。この場合にこそ「野」は不可欠だけれど、どっちかなア。『六百句』(1946)所収。(清水哲男)


June 1262001

 ところてん遠出となればはすつぱに

                           小坂順子

先の茶店での即吟だろう。「ところてん」は、上品に食べようとすると食べにくい。「遠出」の解放感から、作者は音を立てながらすすっている。食べているうちに、なんて「はすつぱ」な食べ方だろうとは思うが、そんな「はすつぱ」ぶりを自然に発揮できるのも、旅ならではの喜びだ。よく「旅の恥はかき捨て」と言うが、それともちょっとニュアンスは違う。恥とも言えない恥。強いて言えば、自分でしか気づかない小さな恥だ。それを奔放な「はすつぱ」と捉えたわけで、逆に作者日頃のつつましさも浮き上がってくる。可愛い女性だと、男には写る。ところで「ところてん」は「心太」と書く。語源ははっきりしないようだが、『広辞苑』には「心太(こころぶと)をココロテイと読んだものの転か」とあった。いささか苦しい説明のようだが、昔は「ところてん売り」が来たというから、その売り声の「ココロテイ」が「トコロテン」と聞こえていたのかもしれない。物売りの声には独特の発声法があって、一度聞いたくらいでは何を売っているのかわからない場合も多い。現に、我が家の近所に隔日に車でやってくる八百屋のお兄ちゃんの売り声も、いまだに何と言っているのか私には判然としない。『俳諧歳時記・夏』(1968・新潮文庫)所載。(清水哲男)


June 1162001

 けむりあげ平日つづくかたつむり

                           田畑耕作

曜日とか金曜日とか、休日や祝日以外の曜日を特定した句は散見されるが、正面から「平日」を捉えて据えた句は珍しい。各曜日にはそれなりの表情があるけれど、平日にはそれが希薄だからである。のっぺらぼうだからだ。そんなのっぺらぼうの日々に「けむりあげ」と表情をつけたのが、掲句。「けむり」は民の竃(かまど)からあがるそれか、それとも直截的に工場街のそれなのか。はたまた、下五の「かたつむり」が想起させる梅雨にけむる人里だろうか。いずれにしても、人間の普通の営みや普通の環境を象徴する形容語として使われているのだろう。動くのか動かないのかわからないほどに、じいっとしている「かたつむり」。「けむり」をあげてはいるが、これまた動いているのかいないのかわからないくらいに凡々たる「平日」の人間のありよう。この二つを取り合わせることで、物憂いような気だるいような「平日」の気分が、意外にも非常に美しいシーンとして彫琢されることになった。この句をそらんじて「平日」の駅やバス停に向かう自分を想像すると、自分もこの句のなかに溶け込んでいるような気分になるだろうなと思った。悪くはないね、この気分。「平日つづく」明日もまた、いつものように「けむり」をあげて。『昭和俳句選集』(1977・永田書房)所載。(清水哲男)




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