持ってないから「株価」がどうなろうと知ったことか。……とはいかないところがヤリキれませんね。




2001蟷エ9譛20譌・縺ョ句(前日までの二句を含む)

September 2092001

 日と月のめぐり弥栄ねこじゃらし

                           池田澄子

観や背景を大きく構えて、小さなものにストンと落とす。俳句では、よく見かける手法の一つだ。このときに問われるのは(句が面白くなるかどうかを決めるのは)、大きな構えよりも小さなものの選択眼だろう。揚句は「日と月のめぐり」と大きく構え、駄目押しのように「弥栄(いやさか)」と、構えにつっかい棒までしている。「弥栄」は、発展繁栄を祈る掛け声。結婚披露宴の乾杯の音頭などで「御両家の弥栄を……」と、よく耳にする。「日と月のめぐり」はまことにおめでたく、「弥栄」とまで叫んだ作者の目がさてどこに落ちるのか。と、期待して読むと、なんとそこらへんに生えている「ねこじゃらし」に落ちたのだった。「なあんだ」と拍子抜けの面白さを感じることもできるし、一歩進めて「ねこじゃらし」の平凡から「日々好日」の庶民感覚を読むこともできる。最初私はそんなふうに読んだが、なんだか違うような気がして、何度か反芻してみた。そして思ったのは、作者が「ねこじゃらし」に見ているのは、その平凡さではなくて、その無表情ではないのかということだった。この草は、いつだって「どこ吹く風」と揺れている。そう考えると「弥栄」の叫びは、滑稽なほどに空しく響いてくる。叫んだ作者の心情などは、あっさりと無視されたというわけだ。すなわち「日と月のめぐり」に余計なつっかい棒は無用であり、ただ虚無的に「日と月」はめぐるのみなのだと、私のなかでの句意はここに落ちることになった。「俳句研究」(2001年10月号)所載。(清水哲男)


September 1992001

 乙女座の男集まれ花野の天

                           原子公平

とえば、野村泊月に「大阿蘇の浮びいでたる花野かな」がある。「花野(はなの)」は秋の花が咲きみちた野を言うが、本義はこのように広々とした野や高原を指している。花々が澄んだ光のなかで揺れ、まことに明るく広大な野だ。が、そこにはどことなく秋ゆえの淋しい感じも漂っている。「乙女座の男」である作者(九月十四日生まれ)は、そんな高原に来ている。「天」は都会では見られない広々とした空であり、抜けるような青さを湛えていて、上天気なのだ。身も心も晴れ晴れとした上機嫌が、思わずも叫ばせた一句だろう。日ごろから何となく「乙女座の男」であることにひっかかっていた気持ちが、ここ「花野」に立つうちに解き放たれた。「花」と言えば「乙女」じゃないか。と、平凡な連想が「乙女座の男」を「みんな」集めたら愉快だろうなという空想につながった。「天」の意識は、もうこの世にはいない男たちへの呼びかけも含んでいるのかもしれない。では、ここに「みんな」を集めたらなぜ愉快なのか……。などと、あまり理屈をこねて鑑賞すると面白くない句になってしまう。字面だけを追うとよくわからないところはあるが、作者の上機嫌はとてもよく伝わってくる。作者の爽やかな気持ちの良さがわかれば、それでよいのではないか。『海は恋人』(1987)所収。(清水哲男)


September 1892001

 すずなりの茱萸をかざして通りけり

                           若林いち子

だちょっと「茱萸(ぐみ)」の熟れる季節には早いだろう。霜の降りるころになると、実の赤さが増す。その頃の情景だ。かつての山の子としては、一読「わあっ、なんと豪勢な」と声をあげたくなるような句である。真っ赤な実が「すずなりに」なった大枝を、これ見よがしにサワサワと「かざして」通る人。そこらへんにいくらでも茱萸の木は自生していたが、このような「大物」に出会うことは、めったになかった。だから、作者とともに私もまた、通る人をただうらやましく見つめるだけである。食べたい欲望よりも、所有欲をかきたてられるのだ。柿でも栗でも、あるいはアケビなどでも、野の物に対する気持ちはみな同じように働いていた。そういうことを思い出した。ところで、当歳時記が定本としている角川版歳時記では「茱萸」を秋としているが、厳密に言うと「茱萸」は季語ではない。「茱萸」という名前はグミ科グミ属の総称だからだ。冬をのぞいた三季に、種類の異なったそれぞれの「茱萸」がある。つまり、単に「茱萸」という名前で特定できる植物は存在しないわけだ。したがって、もっともポピュラーなこの季節のものは「秋茱萸」と言い習わしてきた。揚句の情景から推察して、読者はこの「茱萸」を「秋茱萸」と判断することになるのである。『新歳時記・秋』(1989)所載。(清水哲男)




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