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April 0442002

 ポケットの鶯笛に手の触れぬ

                           佐藤和枝

語は「鶯笛(うぐいすぶえ)」で春。上手に吹けば、鶯そっくりの音が出る。よく梅園などで売られているので、梅見の帰路の句かもしれない。懐かしさにかられて買い求め、そっとコートのポケットに収めた。そのうちに買ったことすら忘れてしまっていたのだが、ふと手が触れたときに一瞬何だろうと思い、「ああ、さっき買ったんだっけ」と思い出した。表面的にはそれだけの句だけれど、さりげなく伝えられている作者の心の弾みが心地よい。いま取りだして歩きながら、子供のようにピーピー吹くわけにはいかないが、家に戻ったら吹いてみよう。昔みたいに、うまく吹けるかしら……。楽しみだ。そんなささやかな心の弾みである。名所や観光地に出かけると、このような郷愁を誘う玩具に出くわす。笛の類はもちろん、独楽やら竹とんぼやら達磨落としやら首を振る虎やらと、どういうわけかビー玉だとかビーズ細工なんてのまで売っていたりする。つい買ってしまい、帰宅してからちょっと遊んでみるだけで、いつの間にやらどこかに紛れてしまう。逆に買おうかどうしようかと逡巡して、結局買わずに帰り、やっぱりあのときに買えばよかったと、ひどく後悔することもある。郷愁の玩具。現代の子供が大人になったら、そう呼べるものはあるのだろうか。脱線して、そんなことも思ったことである。「俳句研究」(2002年4月号)所載。(清水哲男)




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