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October 30102002

 神無月主治医変はりてゐたりけり

                           秋本ひろし

語「神無月(かんなづき)」は陰暦十月の異称なので、冬に分類。今年は来週の火曜日、十一月五日が朔日にあたる。作者は、定期的に診察を受けている人だ。いつものように出かけていったら、主治医が変わっていた。前回の診察のときには、交替するなど聞いていないし、その気配すらなかったから、狐につままれたような気分だ。何かよほどの事情があっての、急な交替なのだろうか。が、新しい主治医に、根掘り葉掘り尋ねるわけにもいかない。私には経験がないけれど、長い間診てもらっていた医者が前触れもなしにいなくなるのは、かなり心細いことだろう。カルテは引き継がれても、蓄積された信頼の心や親愛感は引き継がれないからである。なんとなく釈然としない気持ちのままに診察が終わり、ふと今が「神無月」であることに気がついたのだった。まさか前任者を神のように崇めていたわけではないが、神様ですら忽然と不在になる月なのだからして、医者がひとり姿を消したとしても不思議ではないかもしれない……。とまあ、妙な納得をしているところが読ませる。とかく生真面目に重たく詠まれがちな神無月を、本意を歪めることなく軽妙に詠んでいて、しかもペーソスが滲み出ている。現代的俳諧の味とは、たとえばこういうものであろう。『棗』(2002)所収。(清水哲男)




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