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May 0352003

 鯉のぼり布の音立て裏日本

                           秋沢 猛

じめは、干してあるのかと思った。数年前のこと。この時期に近所を散歩していると、新築とおぼしき家の二階のベランダから屋根にかけて、とてつもなく大きな「鯉のぼり」が広げられていた。ちょうど、布団を干すときのような広げ方だったので干してあるのかと思ったのだが、そうではないことにすぐに気がついた。その家には、庭らしい庭がないのだった。以前の家では空を泳がせていたのが、越してきて不可能となり、仕方なく屋根に広げて祝うことにしたのだろう。そう勝手に推測して、なんだか切なくなってしまったことを覚えている。掲句の鯉幟は、むろん勢い良く空を泳いでいる。当たり前の話だが、やはりこうでなくては……。「布の音立て」が秀抜だ。言われてみればなるほど、「裏日本」の湿り気のある大気のなかでは、立てる音も乾燥した地方のものとは違うだろう。どこか布地のこすれるような音がするのだ。それがまた、裏日本特有の濃い緑の背景とあいまって、格別の風情を醸し出しているという句だ。ところで「裏日本」という言葉は、差別用語だという理由で、三十年ほど前くらいからマスコミでは使わなくなっている。私は「裏日本」育ちで、なんとも思わずに「裏日本」と使っていたけれど、どうなんだろう、やっぱり差別なのかしらん。「日本海側」と言い換えてすむ場合はよいとして、では、この佳句をいったいどうしてくれるんだ。『新歳時記・夏』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)


April 2842013

 咲き誇りたる北大のチューリップ

                           秋沢 猛

年度から、はやひと月が経とうとしていますが、通勤電車はまだ混んでいます。四月は希望をふくらませる月です。プロ野球ファンしかり、大学生もまたしかり。四月の大学のキャンパスは、一年で一番にぎわいます。新入生はもちろん、出席不良でなかなか単位がとれなかった筆者のようなダメ学生も、ゴールデンウイークの前までは、せっせと開幕ダッシュをしておりました。北海道大学、道民の憧れである北大のキャンパスを歩く新入生は、咲き誇っている色とりどりのチユーリップのような明るい心持ちでしょう。北国の春はこれからです。掲句は、広いキャンパスに咲き誇るチューリップに、北大生の誇りと大志を重ねています。「咲き誇り」という大仰な表現も、学生の姿とチューリップの色彩を重ねることで、一句のなかでなじんでいます。また、北大がもつバンカラで大らかなイメージにもむすびつき、東大や京大や九大や早慶よりも、北大にはチューリップが似合います。「俳句歳時記・春」(角川ソフィア文庫・2012)所載。(小笠原高志)




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