六月に東電の電力供給量が需要量を下回るという予測。だから原発推進せよってか。




2003ソスN5ソスソス10ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

May 1052003

 自販機にしやがむ警官栗の花

                           佐山哲郎

語は「栗の花」で夏。まだ、花期には少し早いかな。句の眼目は「警官」を「しやが」ませたところにある。警官もいろいろだが、いわゆる「お巡りさん」だ。何か飲み物でも買ったのだろう。「自販機」だからしゃがまざるを得ないのだが、こういうところを見かけないかぎり、警官はいつも表では立っている存在だ。職業柄とはいえ、常に人を疑うという緊張感は相当なものだろう。しかし、疲れたからといって、しゃがんでいたのでは仕事にならない。まず、自分の姿勢が無防備に見えてはならない職業なのだ。そんな警官が、ふっとしゃがんだ。一瞬、無防備な姿勢になった。そこを見逃さずに詠んだ作者の観察力は、なかなかに鋭い。でも、栗の花との取りあわせの妙味はどこにあるのだろうか。ちょっと考えさせられた。おそらく、高いところで咲く花の形状ではなくて、あの独特の匂いを詠み込んだのではなかろうか。甘いような青臭いような匂いは、たとえれば女の匂いではなく、男の匂いである。普段はさして性を感じさせることのない警官に、作者はこのとき、不意に男臭さ、人間臭さを感じたのだと思う。人はたぶん、無防備なときにこそ、いちばん人間臭さやその人らしさを発散するのだろう。ちなみに、作者は浄土宗の住職である。こっちは警官とは逆に、坐っているイメージの強い仕事ですな。『東京ぱれおろがす』(2003)所収。(清水哲男)


May 0952003

 舗装路に黒穂東京都に入れり

                           中島まさを

語は「黒穂(くろほ)」で夏。病気にかかった麥を言うので、分類は「麥」に。いつごろの句だろうか。高度成長期ではあろうが、まだ初期の段階と思われる。作者は地方から列車で出てきて、句の光景を車窓から見ているのだと思う。マイ・カー時代は少し先の話である。東京周辺部ではまだ「舗装路」が珍しかったころなので、舗装路が見えたときに「東京都」に入ったことに気がついたのだ。周辺にはまだ昔ながらの麥畑が広がっているのだが、そのところどころに黒い穂が混じっている。とにかく、畑に勢いがない。環境破壊や公害が表立って問題にされることもなかったころに、いちはやく田舎の人の目はこのようにして、病んでいく東京に気がついていたのだった。「東京」ではなくて、故意に「東京都」としたところが句の眼目であり、痛烈に皮肉が効いている。現在だと、どうだろう。どんな光景に「東京都」に入ったことを感じられるだろうか。もはや、広がっている光景の変化だけで感じ取るのは無理かもしれない。他県との境界にある何らかのモニュメントを知っているか、あるいは山や川の地勢に通じているかしないと、行政区分上の「東京都」への入り口はわからなくなってしまったようだ。「東京都」が周辺に膨張しつづけた結果であり、いまなお膨張はつづいている。『新改訂版俳諧歳時記・夏』(1968・新潮文庫)所載。(清水哲男)


May 0852003

 谺して山ほととぎすほしいまゝ

                           杉田久女

女の名吟として、つとに知られた句。「谺」は「こだま」。里ではなく、山中という環境を得て自在に鳴く「ほととぎす」の声の晴朗さがよく伝わってくる。読者はおのずから作者と同じ場所に立って、少しひんやりとした心地よい山の大気に触れている気持ちになるだろう。おもわずも、一つ深呼吸でもしたくなる句だ。作者は下五の「ほしいまゝ」を得るまでに、かなりの苦吟を重ねたといわれる。確かに、この「ほしいまゝ」が何か別の言葉であったなら、この句の晴朗さはどうなっていたかわからない。よくぞ思いついたものだが、なんでもある神社にお参りした帰り道で白い蛇に会い、帰宅したところで天啓のようにこの五文字が閃いたのだそうだ。となれば、句の半分は白い蛇が作ったようなものだけれど、白い蛇と言うから何か神秘的な力を想像してしまうのであって、詩歌の創作にはいつでもこのような自分でもよくわからない何かの力が働くものなのだ。ついに理詰めには行かないのが詩歌創作の常であり、とりわけて俳句の場合には、言葉はむしろ自分から発するというよりも、どこからか降ってくるようなものだと思う。作者が動くのではなく、対象が客のように向こうからやってくるのだ。やってくるまで辛抱強く待つ状態を指して、苦吟と言う。その苦吟の果てに、この五文字を感得したときの久女の喜びはいかばかりだったろう。咄嗟にあの白い蛇のおかげだと思ったとしても、決して頭がどうにかなったわけではないのである。『杉田久女句集』(1969)などに所収。(清水哲男)




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