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December 21122003

 海鼠腸や予報は晴の明日へ酔ひ

                           小泉もとじ

語は「海鼠腸(このわた)」で冬。海鼠(なまこ)の腸の塩辛だ。これにウニとカラスミとを並べて、日本三大珍味と言う(人もいる)。いずれも酒の肴として親しまれてきた。アツアツのご飯に添えても美味いというが、私にはピンとこない味だ。いわゆる酒飲みではないからだろう。若い頃には何でも飲めたが、いつしか日本酒もウィスキーも、ワインすら飲めなくなった。いや、無理すれば飲めるし良い気持ちにもなったりするのだが、次の日がいけない。猪口に三杯くらい飲むと、翌朝は決まって頭が痛くなるのだ。したがって、ここ三十年ほどはビール専門。これだけはいくら飲んでも大丈夫なのだから、人間の身体とは不可解なものである。でも、それこそ海鼠腸などで日本酒をちびりちびりやっている人を見るのは好きだ。当方のソーセージにビールなんて取り合わせは、どうもガサツでガキっぽく感じられてならない。そこへいくと日本酒をたしなむ人たちには、男女を問わず、どこかに大人の風格というものがある。晦日ソバにお銚子一本なんて、粋なものです。私はソバもアレルギーで駄目だから、この取り合わせは見果てぬ夢だ。いつの暮れだったか、それでも友人たちと神田の有名なソバの店に出かけ、ひとりビールを舐めた侘しさを、きみ知るや。なんだか俳句が二の次になってしまい申し訳ないが、句のよさは「海鼠腸」ばかりか天気「予報」も肴になると言ったところだ。表で仕事をする人なのかもしれない。明日に何か特別に嬉しいことが控えているわけではないが、ただ晴れるというだけで気分がよくなる。こういう気持ちは誰にでもあるのだけれど、ここまできちんと句にした人は少ないだろう。『現代俳句歳時記』(1989・千曲秀版社)所載。(清水哲男)




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